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十一話「虎と風と兄弟と」 ページ12

倉庫内に敦の叫び声だけが響く。
やめて、そんな苦しそうな声ださないで。
目の前がぼやける。
泣いているんだ。




「ダメ、お兄ちゃん、お願いだから……」





敦はだんだん人の形から離れていく。
自分の声が弱々しく消えていき、涙が頬を伝った。






「巷間には知られていないがこの世には異能の者が少なからず存在する。
その力で成功する者もいれば、力を制御できず身を滅ぼすものもいる」


「太宰さんやめてください!!このままではお兄ちゃんが………!!」








涙がぽろぽろと落ちる。
太宰は一体何を考えているのだ。





「大方、施設の人は虎の正体を知っていたが君には教えなかったのだろう。
勿論Aちゃんもそのひとりだ。君だけが解っていなかったのだよ。」






Aはもう言葉を出すことが出来なかった。
また見ていることしかできなかった。








「君も『異能の者』だ。現身(うつしみ)飢獣(きじゅう)を降ろす月下の能力者……」







そして二人の目の前に現れたのは白虎だった。
叫び声は唸り声に変わり、目はまるで獲物を食らうような野性的な姿だった。







「お兄……ちゃん……」








オオオオオオオオッ!








敦、いや虎は太宰さんに向かって走り出した。
足がすくんで動けない。
その場にへたんと座り込みただ二人の戦いを目で追うことしかできなかった。






「こりゃ凄い力だ。人の首くらい簡単に圧し折れる。」






バキバキッと荷物が壊される。
太宰はひらりひらりと虎の攻撃を避ける。
動かないと、逃げないと。
でないと自分まであの荷物と一緒に壊されてしまう。





「ひっ……」




宙に舞った砂埃の隙間から虎の目がみえた。
こっちに向かってくる。
その場で座り込んで動けなくなったAは虎に追いつめられる。
私……ここで死ぬのかな?
……虎が飛びかかり、反射的に手を出した。







ーお兄ちゃんいい加減落ち着いて!!!またビンタするよ!!ー






ごめんなさい、もう一度だけ…。
ぎゅっと目をつぶった。







ブンッ







まるでビンタでもするかのように手を振った。
その瞬間虎は吹き飛ばされ、壁に打ち付けられた。






ー触れたもののほとんどを傷つけてしまうんですー









少女の力が月下に光り、その姿を表す。

十二話「人間失格」→←十話「届かぬ声」



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設定タグ:文スト , 中島敦 ,   
作品ジャンル:アニメ
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+アリス+(プロフ) - 野良神さん» 誤字の指摘ありがとうございます。すぐに直しますね。 (2018年12月24日 10時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)
野良神(プロフ) - 13ページの異能力が維能力になってますよ! (2018年12月24日 9時) (レス) id: 98ee09b097 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - issuさん» 判りました。こちらの不具合かもしれないので直してみます。この作品を見てくださりありがとうございます (2018年10月13日 21時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)
issu(プロフ) - はい! (2018年10月12日 22時) (レス) id: 9f68ff9d03 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - issuさん» イメ画は設定のところにあるもののことでしょうか? (2018年10月12日 20時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:+アリス+ x他1人 | 作成日時:2018年4月6日 17時

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