九話【要塞】 ページ10
「……ッざけんなよ」
誰かがそう呟いた。
それはAたちの居る場所よりも少し遠い、あのピエロと近いところから聞こえた。
男の声であった。
男は立て続けに悪態をつき、叫んでいた。
「ふざけんなよッ！
訳も判らず集められて、負けたら死ぬゲームに参加しろ？
俺は参加しねえ！此処から出てやる！」
「え〜それは無理だよ〜」
「そんなの関係ねえよ！」
「だって此処＿＿」
ー
静寂が響いた。
何を云っている？は、空の上？
三十人が目を見開き、口をポカンと開け、ただ呆然と立っていた。
あの男でさえ、先刻の怒り狂った顔から間抜けな顔に変わっていた。
「プークスクス、なにその間抜け面ぁ〜！」
「おい待てよ……空の上？冗談も大概に……」
「嘘じゃないよ。なんなら見せてあげる」
ほら、とピエロは云うと、何処からか取り出したリモコンを見せ、その赤いボタンを押した。
次の瞬間、白い空間の床の部分が透け、青い空と白い雲が丸見えの床があらわになった。
床がガラスになっている。
何人かの顔が青くなった。
「映像じゃないよ。本物の空。
なんなら全部シースルーにしちゃう？」
やめてくれ、と誰かが云った。
あの男は今度こそその間抜け面を真っ青にし、膝から崩れ落ちた。
「天空の要塞。なんとカモフラージュが出来る優れもの！
誰もこの要塞を見つけられない！ね、凄いでしょ！」
「……何処がだよ……」
またあの男が呟いた。
「ああ、駄目だね。我を失っている」
Aの隣に居る太宰が呟く。
その言葉の意味は、記憶のないAでも十分理解できた。
我を失った獣は訳も判らず暴れ狂う。
人間の場合も、また然り。
「お前を殺してそのリモコンを奪えば、下に降りれるのか？」
「勿論」
「へへッ……じゃあ決まりだな……」
男の声が震え、所々裏返る。
次の瞬間、男が立ち上がり胸元から拳銃を取り出した。
ヨコハマ周辺は銃が林檎のように買える、治安の悪い場所だ。
この中に居る三十人の誰かが銃を持っていてもおかしくはない。
男が引き金を引く。
バンッ
破裂音、全員が目をつむる。
火薬の臭いが薄まった頃、恐る恐る目を開けた。
「嘘……」
Aの声だった。
心の縁から零れた声。
それもその筈。
少女に向けられた弾丸が少女の目の前で止まっていたからだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 58人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
+アリス+(プロフ) - 怪盗MOONさん» ふふふ、どうでしょうか……。此れからのお楽しみです。 (2019年7月21日 12時) (
レス) id: 00e250021f (このIDを非表示/違反報告)
怪盗MOON - なるほど。道化師は異能力者で、此のデスゲーム、・・・日い、“脱落者ニハ死ヲ与ウル”は道化師の異能と云う事か・・・。(と、云うのが私の推測です。) (2019年7月20日 15時) (レス) id: b5aabf0ca5 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - あいどんとすぴーくいんぐりっしゅさん» ありがとうございます。惚れていただけるなんて光栄です。更新頑張りますので、楽しみにしていてください(*^^*) (2019年6月6日 19時) (レス) id: 00e250021f (このIDを非表示/違反報告)
あいどんとすぴーくいんぐりっしゅ - え……なにこれ………めっちゃ好きなんですけど！！ヤバい！この小説に惚れる！いやもう惚れてる！更新楽しみにしてます！頑張って下さい！ (2019年6月6日 18時) (レス) id: 7b91c6ec22 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：+アリス+ | 作成日時：2019年5月3日 17時
