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四話【鍵】 ページ5

「この箱の中にある鍵を取り出して脱出します。
先程天の声さん(仮名)が落としてきました」


「あれは驚いたね」


「暗号を解いてこの箱を開けるそうです」


「ねえ無視かい?」





残り十五分。
太宰とAは座りながら箱を見つめていた。
鍵の入った赤く小さな箱には南京錠がついており、
『この箱を開ける鍵を探す』という厄介で面倒臭い代物であった。





「ねえ、そんな面倒臭いことしなくても私なら簡単に扉を開けられるよ」


「……本当ですか?」


「うんうん」






太宰が身を乗り出してAに話しかける。
Aは太宰を疑いながら返事をした。
少しばかりの興味を向けられた太宰は嬉しそうにこう云った。






「私ピッキングできるよ」


「冗談はやめてください。殴られたいんですか?」


「んんん!?タイムタイム落ち着きたまえ!
本当だから嘘じゃないからその拳をおろしてくれないかい!?」


「本当なんですね?」


「ああ、本当だとも」


「…………やっぱり信じられません」


「ん〜、じゃあ今から証拠を見せるから見ていてくれ」


「……判りました」






Aは信じがたい表情でうなずくと、太宰に箱を差し出した。
太宰はポケットからヘアピンを取り出すと、
南京錠の鍵穴へと突っ込み器用にいじった。
カチャ、と金属の噛み合う音が聞こえ箱が開いた。






「嘘……」


「ね?本当だと云っただろう?」


「……ありがとうございます」


「ふふふ、どういたしまして」






勝負に負けたような気がして悔しいが、人間として礼儀は守ろうとお礼を云った。
ではこれで鍵を開けましょう、とAが鍵を扉に差し込むが……






「…………」


「?……Aちゃんどうしたんだい?」






鍵穴が二つあった。
一筋縄ではいかないとはまさしくこの事だ。
Aはため息をつくと、「あああもう!!」と髪をくしゃくしゃに書きかき乱しながら太宰の方を向いた。
悔しいが云うしかない。






「太宰さん、またピッキングお願いできますか?」






無表情を悔しそうにしかめながら、ほんのり顔を赤くする。
太宰はにんまりと嬉しそうにこう云った。







「ああ、任せたまえ」

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+アリス+(プロフ) - 怪盗MOONさん» ふふふ、どうでしょうか……。此れからのお楽しみです。 (2019年7月21日 12時) (レス) id: 00e250021f (このIDを非表示/違反報告)
怪盗MOON - なるほど。道化師は異能力者で、此のデスゲーム、・・・日い、“脱落者ニハ死ヲ与ウル”は道化師の異能と云う事か・・・。(と、云うのが私の推測です。) (2019年7月20日 15時) (レス) id: b5aabf0ca5 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - あいどんとすぴーくいんぐりっしゅさん» ありがとうございます。惚れていただけるなんて光栄です。更新頑張りますので、楽しみにしていてください(*^^*) (2019年6月6日 19時) (レス) id: 00e250021f (このIDを非表示/違反報告)
あいどんとすぴーくいんぐりっしゅ - え……なにこれ………めっちゃ好きなんですけど!!ヤバい!この小説に惚れる!いやもう惚れてる!更新楽しみにしてます!頑張って下さい! (2019年6月6日 18時) (レス) id: 7b91c6ec22 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:+アリス+ | 作成日時:2019年5月3日 17時

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