【APH短編】日だまり探して。

もう二度と。【西】 ページ6

ー彼は元気かなあ。

明るすぎる窓の外を眺めながら、ぼんやり想う。
太陽みたいなあの笑顔は、時々頭の中に現れて胸を苦しくさせた。
思い出は、笑顔だけじゃなく、星の数ほどある。


毎年収穫していたトマト。
サラダにかけるオリーブ。
眩しすぎる夏の太陽。
二人で歩いた緩い坂道。
元気が出る、彼特製のおまじない。
冬の日の、暖まった布団。
柔らかなくせっ毛。
大きすぎる、彼の手。


いくらでも思い出せた。
目を閉じれば瞼の裏に、それはくっきりと浮かんできた。

懐かしいな。
毎日の、ほんのちょっとした一瞬、一瞬が。
あの時、ああすれば良かったなんて、後悔も。全てが今では、ただ愛しい。

ありきたりで、怠惰で。

でも、何よりも有意義で輝いていた日々には、もう戻れない。

会いたい。
でも、時がたってしまったから。
私が純粋で素直な、子供では無くなってしまったから。
もう前みたいには笑えない。

大人になるということは、残酷なことだ。
きらきらした宝石だった物が、ただの石ころに変わってしまう瞬間から…。


私にとってのトマトはまだ宝石だから。
ーまだ大丈夫。
私はずっと子供だと、言い聞かせて。

今日も、あの日のままで、彼を想う。

雨の日は。【日】→←会いたい【仏】

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