ページ ページ4
.
『いやぁ、参ったアル。モームのやつどこ行ったヨ』
シャンクスと変わらない上背のある女だ。
女は彼等に気づいていないのか、海王類の頭を掴み引き上げ始めた。呆気にとられていると、ようやく彼女は海賊の存在に気づいた。
『あー、こんにちは』
海水で重そうなキャスケットから金色が彼等を見据えていた。
※※※
「よくもまぁこんなでかいもんを、女がひとりで仕留めたよなぁ」
「あんな細っこいのになぁ」
レッドフォースの甲板は、突然現れた女の話で賑わっていた。
「うちの船でソレ調理してやるから、食わせてくれよ。シャワーも貸してやるから」見たこともないその海王類は肉付きもよく美味しそうに見えたが、シャンクスの興味をそそったのは女の方だ。
海王類を倒しその巨体を泳いで運び、軽々引き上げた謎の女。
──興味を持つなという方が無理だろう。
船内のシャワールームの戸が開き、ふわりと黒い羽が視界の端を舞う。彼の、彼等の目はある一点に注がれた。
『船長さん、シャワーありがとナ。おかげでさっぱりしたヨ』
金色と黒曜石の視線が交差する。
子供の頃、飽きるほど読んだ童話の主人公が其処にいた。
「“背中の羽は真っ黒で、小さいけれど立派なものでした。彼女は金色の髪に、金色の瞳を持ち──”」
「かあさん、アレスはドコにいったの？もうあえないの？」
「お月様に行っちゃったから会うのはなかなか難しいと思うけど、もしも会えたら優しさと思いやりを持って接するのよ。そうしたら、もしもシャンクスが困ってる時、彼女達が助けてくれるから」
「うん！ いっぱいごはんをたべさせてあげる！」
『おーい、船長さん？ どうしたヨ？』
戦闘民族アレスは架空の存在だと誰もが云ったけど、ロジャー船長、やっぱり俺達は正しかったんだ。くつり、と彼は嬉しそうに笑った。
「俺はシャンクス、“東の海”から来た海賊だ。よろしくな」
『私はA、月から追放されたアル。よろしく』
今日は宴だ、と誰かが叫んだ。
仲間たちに囲まれて楽しげに笑う彼女の姿に彼は、遠い果の誰かへ思いを馳せた。
──見せたかったよ、あんたにも。
偉大なる航路の夏島で、金色が楽しげに揺れた。
フェッテのはじまり
野郎ども！！ 宴の準備にかかれ！！！
フェッテ(fête：宴)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 49人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：スピネル | 作成日時：2022年1月23日 22時
