She See Sea (ページ5)

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　「えー！ロジャー船長、Aまで連れて行く気かよ！！」

　反対だ、とA守るように抱え込むシャンクスに大人達は、ほれ見たことかと深く頷く。

　事の発端はロジャーが好敵手に娘を紹介すると言い出したことが始まりだった。シャンクスに抱きかかえられながら、Aは彼らの話を思い返していた。

　父様達の長年の好敵手、出会い頭に戦闘開始、長丁場を繰り広げてはその後に待っているのはまさかの宴。会ってみたいと思ったことをここで口に出すのは得策ではないことを、幼いながらにもAは知っていた。

　「そうは言ってもよぉ。この先、俺達がAを守るには限界があるだろうが。そうなったら、一番得策なのは白ひげに会わせることだろう」

　船長のもっともな返しに男達は二の句が踏めなかった。

　老い先短いロジャーにできる最後の架け橋、それが白ひげにAを紹介することだ。仁義に厚いあの男のことだ、無下にすることはないだろうとロジャーには分かっていた。それも、こんなに可愛くも儚げな子供が相手ならなおさら。

　「……ハァ。白ひげの島を出たら直ぐにわたしが迎えに行こう」

　そう白旗を振ったのはレイリーだった。シャンクスの腕から娘を掬い、その白銀の髪に鼻を埋める。昼間に若い衆と甲板で走り回っていたAは少しだけ甘酸っぱい香りがするが、逆にそれが子供らしくて微笑ましい。レイリーの息が擽ったかったのかケラケラと笑うAが、控えめに彼の服を引いた。
　
　『お父さん、お話は終わりですか？』

　「あぁ、決着はついた。Aは今からわたしと風呂だ」

　ぺたりと張り付いた前髪を大きな手が撫でる。心地よいその手に薄っすらと目蓋を開いたAの瞳をレイリーは覗き込む。美しい柘榴石をレイリーは一等好んでおり、それは他の船員達も知っていた。美しいものを好む副船長がAを気に入るのに時間がかからず現状が物語っている。

　後ろでシャンクス達がブーイングをしているが彼はそれに一瞥もくれることなく、颯爽と浴室へと消えて行った。

　「……なぁ、バギー。副船長も大概、Aに過保護だよなぁ」

　「……シャンクス、あーゆう人がモンスターペアレントになると怖いんだぜ」

　人知れずその言葉に頷く無数の影が甲板に折り重なった。

愛されるグラナト

　キラキラ輝く柘榴石の星よ

グラナト(Granat：ガーネット)