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愛されるグラナト ページ4

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 初めて見る海は青く、深く、しょっぱい匂いがした。

 島を出たAは、大海原をじっくりと眺めていた。遠くまで見ることのできる彼女の瞳は、地平線の彼方で浮上している海王類を見つけてはその小さな身体を乗り出してしまう。その度に船員達の誰かに身体を引き戻されては、危ないだろうと叱られる。

 「A、お前さんの目は色んなものが見えちまうんだなぁ」

 父親となってくれたひとりは豪快に笑うと、豪快に彼女の頭をかき混ぜるように撫でるのだった。





愛されるグラナト



 「それじゃあ俺は、白ひげに最後の挨拶でもしてくるからよぉ。その後に、Aを連れてくるぜ」

 「……本当にAまで連れて行く気か。俺は心配で仕方ないんだがな」

 甲板で輪になる大人たちから離れたところでA達、若い衆は賑わいをみせていた。
 彼女の左隣に座るシャンクスは最近できた妹分に、航海日誌を広げてやりながら旅の思い出話を自慢気に話してみせる。キラキラと赤い瞳を輝かせながら冒険の旅に思いを馳せるAの頭を優しく撫でるのは正反対に座るバギーだ。

 『そ、空にも島があるの!?』

 「おぉ! 空島には黄金郷だってあるんだぜ!!」

 遠くまで見渡せる瞳で空を見つめるも分厚い雲が邪魔をして何も見通せなかった。それでも兄貴分達から空島の貝を見せてもらった彼女は満足気な顔をしている。

 「Aって普段、目瞑ってること多いけど見えてんのか?」

 綺麗なのにもったいねぇな、赤髪の兄貴分に目元を優しく擦られたAは擽ったそうに肩を竦める。自分とは違って殆どの人種の瞳は黒色か茶色が多いらしいことを、Aは島を出てから初めて知った。現にシャンクスの瞳は黒曜石のような黒みがかった色をしている。バギーも同じような色していたが、彼の方は少しだけ色素が薄い。

 「シャンクス、オメェ知らねぇのか? 此奴の目は千里眼っていうらしいぞ。ずっと見てると疲れちまうんだってよ」

 パチリと開いたAの瞳は柘榴石(ガーネット)のように(キラ)りと輝きを放っている。
 乗船して間もない妹分は大層大人達に可愛がられていた。子供にしてはあまりにも整った顔立ちは精巧に作られたビスクドールのようで、その瞳は宝石と紛うことなき代物だ。

 宝石のように輝くそれを今だけは自分達が独占できることを兄貴分達はひっそりと噛みしめるのだった。

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作者名:スピネル | 作成日時:2022年6月12日 19時

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