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わたしの目を覗き込む彼の瞳はキラキラと輝いていた。
黒い瞳に無数の星を住まわせたその人は、豪快という言葉がよく似合う。ロジャーと名乗ったお髭の立派なその人はやはり海賊船の船長さんで、航海の最終地点であるこの島だと教えてくれた。
「俺達は早すぎたんだ」
『……』
「んん？ 俺達は結果に満足してるだぜ？ 良い航海だった！！」
人間というのは、海賊というのは、こんなにも大きな存在なのか。
多くの文献を読んできた。青海、空島、自然、動物、海王類、そして――人間。
人間が一番わたしの興味を惹いた。人間は憎しみと欲を持って戦い、時に愛を語るという。まったくの真逆の位置に存在するそれらの感情を、わたしは知らない。
「……に、してもよぉ。お嬢ちゃん、えらい綺麗な瞳をしてんだな」
『あらまぁ、そうなんですか？』
「なんだ、自分のことなのになんにも知らねぇんだな」
『わたし、自分以外の生物に会うの生まれてはじめてなんです』
目の前の彼等から戸惑いの色が覗えた。
『わたしに航海のお話を聞かせてください！ 外の世界はどんな景色なんですか？ 島は？ 海の色は？ 空は日によって様変わりするって本当ですか？』わたしの勢いに彼等は呆けていたが、またもや楽しそうに笑いだした。
それからわたしは彼等の話を、彼等はわたしの話を夜通し語り合った。
今日は良い日だ。
わたしが生まれてはじめて生物に会った日。誰かと言葉を交わした日。こんなにも素晴らしい経験をさせてくれた彼等に、わたしは帰りの航海物資をプレゼントしよう。
「おぉ！ 悪いな！ 俺らからも、何かお前さんにプレゼントしよう！ 何が欲しいものはねぇか？」
『……なんでも、良いんですか？』
「ん？ おぉ！ なんでも言えよ！」
欲しいもの。ずっと、ずっと欲しかったものがある。
文献や物語を数多く読んできた中で多くの種族にあって、わたしにないもの。
――本当に言って良いのかな。
恐る恐る船長さんを伺うと、彼は期待に満ちた目でわたしを見つめていた。周りの海賊さんたちもみんな、同じような目で見つめている。
緊張のあまり酷く喉が乾く。
ゴクリと生唾を飲むが、喉の乾きは一向に癒えない。
『わたし――』
ピラートケーニヒと少女
「おい野郎ども！ 俺達の可愛い娘だ！！」
ピラートケーニヒ(pirate：海賊王)
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作者名：スピネル | 作成日時：2022年6月12日 19時
