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秋の夕暮れ時。薄暗く人気のない街の片
隅にそびえ立つのは黒レンガ造りの洋
館。随分前から一人の少年(テオ)が洋館
の前で両膝をつき、両手を胸の前で組
み、目を閉じて祈っている。そこに通り
かかる少女(カリーナ)。洋館と少年を交
互に見ては不思議そうに首をかしげる。
カリーナ ねえ、何をお祈りしてるの？
テオ (目を閉じたまま) 誰かに話したら叶わな
いって言われた。
カリーナ あなた、ここの家の子？
テオ 違うよ。僕の家は教会なんだ。ここには
近づいちゃダメって言われてた。
カリーナ (笑う) そうね、いかにも悪魔が住ん
でそうだもの。壁も屋根も真っ黒！ あた
し、こんな黒い家見たことないわ。
テオ ………
カリーナ ねえ、教会の子がわざわざこんな悪
魔の巣窟みたいなところで祈ってるのは何
故？
テオ この家の主人が本当に悪魔なら会いたい
と思ったんだ。
カリーナ え？
テオ (ようやく目を開けて) あ、願いを話しち
ゃった。(残念そうに) もう叶わないや。
夜の闇が深まるようにゆっくりと暗転。
輪郭すらも見えない暗闇の中、一人の男
の声だけが聞こえる。男は誰かを打って
いるようだ。「父さんはお前を愛してい
るんだ。愛しているから躾けるんだ」。
打たれているのは彼の子供なのだろう。
何も言わず従順に耐えているのだろう。
ふと、稲光のように一度点滅し、沈黙。
闇の中で別の男の声が聞こえる。ボイス
チェンジャーを通したような、人間離れ
した不気味な声が。
？？？ 目を覚まし闇を見よ。市長に災いを、
市長に災いを。脳も臓も焼け朽ちる、燃え尽
きる。市長の最期を。
ゆっくりと明かりがつく。中央には衝立
があり、左右を隔てている。右側にはア
ルバートと妻ハンナ、左側には娘のカリ
ーナ。
夫婦は衝立からそっと娘の様子を覗き見
ている。カリーナの周りには彼女が作っ
たであろう、小さな彫刻が置かれてい
る。どれもどういうわけか、化け物のよ
うな姿に作られている。カリーナはその
うちの一つを手に取り、何やら上機嫌で
鼻歌を歌いながら、時折クスクスと笑っ
ては手の中の小さな化け物をいろいろな
角度から眺めている。
ハンナ (小声で夫に) ねえ、気味が悪いわ。
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田無苑珠(プロフ) - ドロテアさん» わあ、ありがとうございます！慣れてないのでちょくちょく書き方が変になるかもしれませんが、頑張って更新していこうと思います！ (2019年1月30日 7時) (
レス) id: a676c591ca (このIDを非表示/違反報告)
ドロテア(プロフ) - ブログの方から来ました。戯曲、私も好きです。完成するのを楽しみにしています。密かに応援させてください (2019年1月29日 23時) (レス) id: c848795b2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：田無苑珠 | 作成日時：2019年1月28日 21時
