008窃盗 ページ8
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薄暗い路地をひとつの影が走り抜ける。度々後ろを振り返るように立ち止まりながらなるべく遠くへ、遠くへと走っていく。
肺は焼けるように痛く、続かなくなる呼吸を必死につなぎ止めながら走る音だけが静かな路地に存在する。
「やってやったぞ...あの女から"2つ"も盗ってやった...ざまぁみろ...」
手に握りしめたハンター証はケースに入っていてケース内部で赤い光が点滅する。この光が点滅している以上GPSで居場所を知られてしまう。とは言え、このケースは特定の念以外では開かない。
「くそ...これだと迂闊に扱えない、仕方がない」
次の日、朝一番の飛行船に乗って男はその場を後にした。向かった場所は定かではない。しかし、メルイは端末上で赤い光が移動しているのを確認した。
ククルーマウンテン付近から、別の場所へと。
「ふぅん...ま、私以外にあのケースは開けられないし大丈夫だと思うのだけど」
「だから個人依頼はやめとけって言っているんだけど。分かってないよね? メル、人間運ないから家畜の糞と腐った食べ物を混ぜたような奴ばかりだよね? ...人間運ないから」
「2回言わないでくれる?」
肩を竦めるとメルイは眉を下げたまま端末を凝視した。"あの人"にバレたら100回くらい殴られそうだなぁ、なんて物騒なことを考えながら。
「まぁ、今回盗った人間の目星は付いてるんだけどね」
飛行船代とか面倒くさいし、そろそろハンター試験受けようかなぁ、と独り言のように呟くとイルミが同調する。何でも次の仕事上資格が必要なのだとか。一緒に受けに行くか、と話をすると1分後には申請が終了していた。
僅かに点滅するGPSを眺めていると端末が徐に震える。家族でも依頼主でもなく、ミケの掃除夫の男からだった。
「メルイ様、お客様がお見えになりました」
ツゥッ...と目が細められ、唇には愉悦の笑みが広がっている。妖艶でもありおぞましくもある、とイルミは評すると説教は済んだとばかりに部屋を出ていった。
「...そう。今すぐ行くわ」
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のの - めっちゃ好きです、再度失礼しますー!! 応援してます!! (12月11日 16時) (レス) @page9 id: 4685323d64 (このIDを非表示/違反報告)
ふぃあろ(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです、頑張ってください!!絶対と内容がほんとに好き…… (12月9日 20時) (レス) @page7 id: a89e9c6a81 (このIDを非表示/違反報告)
hxin - がんばって、すき (12月9日 8時) (レス) @page5 id: eab9e2d2e5 (このIDを非表示/違反報告)
fille - すここ (12月8日 22時) (レス) id: 1bf7c70f46 (このIDを非表示/違反報告)
のの - おもしろーいです!! 頑張って! (12月8日 19時) (レス) @page5 id: 4685323d64 (このIDを非表示/違反報告)
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