004気付けば負け ページ4
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「誰か...聞こえていたら応答しろ!! 誰か....!!」
「無駄じゃないかね。外に君の部下が倒れていた」
がっしりした体格をしている男が徐に入ってくる。バッと入口を振り返ると男は息を詰めた。
...コイツは客のはずだ。なぜここにいる?
いや、そもそもコイツを引き入れたのはあの女で──。
「これ、便利でしょう? 操作系は得意分野だからイル程ではなくても上手く使えるのよ」
首の後ろや腕、頭の深くまで刺さっている針を掴んで上に思い切り引っ張るといとも簡単に外れ、ビキビキという音と共に姿が元に戻る。
元に戻ったメルイは端正な口元を歪め、尚且つ瑠璃の瞳を妖しげに細めた。
「取引するフリのために、自作自演をしたの。気付かなかったでしょう?」
のこのこと来てくれた組は始末した、そう言い捨てたメルイを目の前に男は膝から崩れ落ちる。次は自分かもしれない、という純粋な恐怖。
「気付けば負け。気付かなくても負け。君たちに負け以外の未来はなかったってことよ」
いつもならもっと手っ取り早く終わらせるんだけど、今は実験ウィークだから色々試さなきゃね、と愛用ナイフを指でくるくると回す。ナイフからは空気を切る、あるまじき音がする。
「...殺せ。もう部下も仲間の組も残ってないんだろう」
「えぇ、残ってないわよ。どれだけ組が手を合わせようとも所詮アナタの組の小間遣いだもの」
メルイの言う通りだった。ここは組織の体でありながら実質的なトップは客を捕まえる彼の組。他の組のトップにも自身の配下を設置しているほど。
「私はね、今回宝石の流通を止めている組を潰せと言われたの。宝石好きな変わった依頼人みたいなのよ」
依頼は熟す。しかし、依頼以上の殺しはしない。
ゾルディックの暗黙の了解であり規則なのだから。
快楽殺人者ではなく、人並みの感覚だってある。
「そう、私はね"組"を潰せと言われたの。組織じゃないのよ。分かるかしら」
「俺の部下だけか...!」
「そう、貴方が据えていた他の組のボスとこの組のボス──貴方──、そして幹部のみ」
貴方の末端部下や他の組の幹部以下は捕獲した後に然るべき場所に自首させるだけ、そう言って男の顔を見た。
気付いても負け。
気付かなければいつの間にか喉元に紅い花が咲く。
「た、助けてくれ......もうしない...!」
「嫌よ。依頼だもの。そうだ、退屈だから踊ってくれません?ルンタッタと、軽快なステップで」
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のの - めっちゃ好きです、再度失礼しますー!! 応援してます!! (12月11日 16時) (レス) @page9 id: 4685323d64 (このIDを非表示/違反報告)
ふぃあろ(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです、頑張ってください!!絶対と内容がほんとに好き…… (12月9日 20時) (レス) @page7 id: a89e9c6a81 (このIDを非表示/違反報告)
hxin - がんばって、すき (12月9日 8時) (レス) @page5 id: eab9e2d2e5 (このIDを非表示/違反報告)
fille - すここ (12月8日 22時) (レス) id: 1bf7c70f46 (このIDを非表示/違反報告)
のの - おもしろーいです!! 頑張って! (12月8日 19時) (レス) @page5 id: 4685323d64 (このIDを非表示/違反報告)
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