003蜘蛛の巣 ページ3
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ドタドタと慌ただしく走る音が聞こえ、這う這うの体で部屋に飛び込んできた男──部下──を見て彼は目を見開いた。
外傷はないが汗という汗が吹き出していてなにかに脅えている。
「どうした」
「新入りの、新入りの女が宝石を流そうとしております! 至急連絡を回した方が良いかと」
嫌なところから汗が吹き出すのがわかった。彼は震える手で端末を開き番号を押す。幾度目かのコール音の後に回線を取る音が耳に飛び込んできた。
「俺のファミリーに不純物が入った。お前は」
「私の所はまだ大丈夫だ。これから先日君の組が引き入れた取引先へ向かう予定だが。それにしても会合場所が遠いぞ、君の組に近くても意味はないぞ」
「それは悪かった。新入りなんだ。....そうか、気をつけろ。相手はかなりアタマが回る」
最近入った新入りの女は優秀だった。仕事も取引もそつなくこなし、最近は大きな太客を手に入れたはずだった。
想定以上の働きを得ることが出来、幹部になる未来も遠くないと思われる女だった。
だというのに────。
予想外の出来事に痛みだすこめかみを抑えてため息をつく。こんなことをしている場合ではないのに何故か落ち着けない。
「今あの女は何処にいる?」
「へ、へい。資料室かと」
分かった、それだけ言うと端末と無線、銃を手に部下を引き連れて資料室へと向かった。彼女はこの組、そして組織のシステムを少なからず理解している。
組が集まって成る組織。
太客を捕まえる組。
取引を進める組。
流通を止める組。
勢いよく資料室を開けるも既にもぬけの殻。資料が些か少なく感じる資料室は荒らされた痕跡はない。どちらかと言えば整理されたような印象を植え付けられる。
探せ、と部下に命じると彼は自身の部屋へと戻った。
「あの女が流そうとしても無駄だ。1つ潰されても他が残るからな」
そう呟いて男は言葉をとめた。
新入りの女が引き入れた太客。
妙に彼の組から近い会合場所。
整頓された資料室。
あそこから抜かれていたのは何だ?
あの女が取引場所の考慮ができないなんてことはあるか?
あそこに置いてあるのは構成員リストに個人情報。
そして──────。
「...おい、おい! 聞こえるか!? 別の組に通達しろ、今行われている取引は反故にしろ!」
今更気付いてももう遅い。
無線はもう機能を果たさない。
もう、蜘蛛の巣にかかってしまった後なのだから。
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のの - めっちゃ好きです、再度失礼しますー!! 応援してます!! (12月11日 16時) (レス) @page9 id: 4685323d64 (このIDを非表示/違反報告)
ふぃあろ(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです、頑張ってください!!絶対と内容がほんとに好き…… (12月9日 20時) (レス) @page7 id: a89e9c6a81 (このIDを非表示/違反報告)
hxin - がんばって、すき (12月9日 8時) (レス) @page5 id: eab9e2d2e5 (このIDを非表示/違反報告)
fille - すここ (12月8日 22時) (レス) id: 1bf7c70f46 (このIDを非表示/違反報告)
のの - おもしろーいです!! 頑張って! (12月8日 19時) (レス) @page5 id: 4685323d64 (このIDを非表示/違反報告)
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