才能の代価 ページ12
黒門side
―――名無Aは、演じるという面において、素晴らしい才能がある
それは先天的な才でもあるし、彼が無意識に磨いたものでもあるだろう
例え、その結果もたらされるのが喪失だと知っていたとしても、彼はきっと同じ道を歩く
そうするしか無いのだと、頑なに信じて…
立花くんと別れ、作業部屋に戻ってきた
元より作業の息抜きとして外に出ていたため、机の上には参照していた資料が広げられている
本当はもう少し早く戻ってくるつもりだった
だけどダンスルームの前を通りかかった時、偶然立花くんを見つけた
すぐにダンスルームに入ることなく、怪訝な表情を浮かべていた立花くん
こっちに気づいた様子もなかったから、しばらく観察していると導かれるようにダンスルームに入っていった
フミでもいるのかと思ったけど、聞こえてきたのは彼よりも低い声
開けっ放しの扉から中を見れば、立花くんとAがいた
Aがクォーツの稽古場にいることはほとんどない
昔はそうでもなかった気がするが、稽古場にいるAは大抵気が立っていた
そんなAを見て、77期生は萎縮するし、純正クォーツの76期生は複雑な顔をする
それがますますAを稽古場から遠ざけていたのだろうが、誰もどうすることもできず、ただ時間だけが過ぎ去った
こればかりは僕が安易に介入していい問題じゃない
下手なことをすれば、Aは消えてしまうだろう
歌劇の世界からも、この世界からも…
｢根地｣
急に名前を呼ばれ、じわじわと水に沈んでいく感覚から一気に引き上げられる
振り返ってみれば、どこか呆れたような表情を浮かべる録朗氏がいた
黒門｢わぁ、びっくり。あれ？僕またなにかすっぽかしてます？｣
課題の締切はまだ先のはず
舞台はないから演出関連でもない
図書館の本は…返してない
けどまぁいつもの事だ。気にすることじゃない
キョトンと目を丸めたまま録朗氏を見る
だけど要件は違ったようだ
江西｢名無が来なかったか？｣
黒門｢話があるって連れていきましたよね？｣
ダンスルームから、と付け足すと歯切れの悪い返答が返ってきた
そこに記憶違いはない
そして、録朗氏の後についてダンスルームを出ていったAの表情に不満があったのも見間違いじゃない
話が見えてきた時、録朗氏から端的に｢逃げられた｣と告げられた
予想通りのことに思わずブハッと笑ってしまったのは、致し方ないだろう
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甘味! - ひえっ設定とかいろいろ好きすぎる､､､応援してます！頑張って下さい！ (2021年6月20日 15時) (
レス) id: f8e0e8f1cf (このIDを非表示/違反報告)
イェ二 - ライラックさん» コメントありがとうございます。不定期のうえ ゆっくり更新ですが、楽しんでいただけると幸いです。 (2021年4月28日 19時) (レス) id: 7b39290272 (このIDを非表示/違反報告)
ライラック - 面白いです。とっても面白いです。更新頑張ってください！ (2021年4月25日 18時) (レス) id: a6b9c04261 (このIDを非表示/違反報告)
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