【銀魂】ロマンスを騙る【短編集】

「え、なんかもしかしてさっきからわたしに怒ってます？」
「たりめーだろ。ひとに好きとか言っといてテメーはどこぞのオッサンに触られてんじゃねーか」

なんて言いがかりなのだ。わたしが告白したことと、オヤジに太腿を触られたことは完全に別件だし。

「別に触られたくて触られたわけじゃないですし」
「……知るか」

吐き捨てるようにそう言ってそっぽを向く、挙げ句にタバコも吸い始めたから一気にマイナス50000点くらい。マイナス四暗刻だ。

「なんなんですか、普通こういう時は心配してくれるもんなんじゃないですか」

この人はまあ、女が求めるような甘ったるい言葉なんて多分言わない。そもそも女心なんて考えたこともないんだろう。それなのに。

「…………悪かった」
「え？」
「もっと早く来ればよかった。」

はあ〜？なにそれ、ずる！
土方は苦虫を噛み潰したような顔でそんなことを言うのだ。甘ったるい言葉というより思ってもない飾った言葉を言えないのだろう。つまりもっと早く来ればよかった、は本音ということ？どゆこと？

「なんで謝るんですか、むしろ助かりましたし……アリガトウゴザイマシタ……」
「そもそもこんなとこで働いてんじゃねえよ」
「職業選択の自由ってご存知ですか？」
「公共の福祉に反してんだよ、警察沙汰まで起こしやがって」
「いやわたしどちらかというと被害者ですし。さっきから失言多くないですか？」

動揺のあまり高速レスポンスを繰り広げていると、ふと土方の手が額に触れた。熱はないのに頬が熱い。

「顔色悪い」
「はは、リップ落ちたかな……」
「もう今日は上がらせてもらえ。家まで送ってく」
「わたしはまだ仕事ありますので！」

むりー！何言ってんだこの人は？？さっきから何？彼氏でもなんでもないのに？警察としてってこと？てかそもそもなんでここにいるの？？

「……あ、もしかしてわたしのこと好きなんですか？」
「斬新な発想だな」
「あ〜！フったのキャンセルしにきたとか？まあギリ８日ですからクーリングオフ可能ですが」
「言ったとおりだ。お前の気持ちには応えられない」

最悪だ。なんだかあまりにも追い風が鬱陶しくて茶化してただけなのに、本家様をリピート再生してしまったではないか。何回わたしの心をめった刺しにすれば気が済むのだ。

「それ地雷なんで爆発しました、さようなら」

そう言って更衣室に戻ろうとすれば、腕を掴まれた。

「けどまあ気にはしてる、あと露骨に避けられて段々ムカついてきた。」