淡いブルーの朝食 ページ46
黙って食事を終えた私を智くんが見てる。
瞳が心配そうに見えるのは
勘違いなのかな？
なんだか悲しくて
慌ててコーヒーを飲んだら咽せた。
「ちょ、だいじょぶ？」
智くんが立ち上がって
反対側から手を伸ばす。
背中をさすろうとしてくれた手を
避けたのは、無意識。
私の悲しみは
いつだって自分勝手だ。
避けてしまってから
目の前でぷらん、と所在無げな手のひらに
私も、智くんも、びっくりしてる。
それでも咳が止まらなくて
それをいいことに私は階段を上って
自分の部屋に逃げた。
窓の脇に膝を抱えて座ると
あの夜の、
…あの夜の、翔くんのことを
思い出しそうになる。
微かに
階段を上る足音。
爪先立ちのような智くんの、軽快で静かな音。
だんだん近づいて
扉の前で止まる。
入ってこない。知ってる。
智くんが
私の部屋に入らないこと。
私を智くんの部屋に入れたくないこと。
自然な仕草で
私に触れるくせに
少しでも雰囲気が出ると避けること。
キス以上しないくせに
キスすること。
知ってる。
でも、知らない。
それ以上、知らない。
智くん。
その壁は厚いですか？
ただ、あなたが
ドアノブを回したなら
いつだって簡単に開くのに。
いつだって私
あなたがそこを開けて
私を見つけてくれるのを
きっと、待ってるのに。
翔くんなら
ノックもせずに開けて
開けた後に「失礼！」とか言って笑うのかな。
あの笑顔は
私を、幸せな、明るい気持ちにするんだろう。
智くんが私を探してくれないのは
見つけてるくせに追いかけてくれないのは
私がこうやって
いつまでも、翔くんのことが好きだからなの？
「…A？」
「……」
「A、返事して」
ふぅ、と息を吐く音。
呆れた？
私もそう。自分の勝手さに、呆れてる。
「もう行くから、仕事」
「……」
行かないで。
ここに来て。
「こら、」
「……」
「行ってらっしゃいは？」
優しい言葉が
どうしてそんなに出てくるの？
私は自分で扉を開けて
智くんの首の後ろを両手で掴んだ。
黒いセーターは優しい感触。
抱きついた私の後頭部を
智くんは少しだけ撫でて
「ほら」と促す。
静かで柔らかな声。
「智くん、」
「ん？」
「行ってらっしゃい」
「ん」
「早く帰ってきてね」
「待ってて」
待ってていいの？私。
聞きたいのに
言葉は唇で塞がれた。
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奈緒(プロフ) - keiさん» お久しぶりです〜！いつもありがとうございます( ；∀；) 私にとっても大切なお話なので、ゆっくりではありますができるだけ進めたいと思います。 (2016年12月8日 4時) (
レス) id: 5db05a964a (このIDを非表示/違反報告)
奈緒(プロフ) - 智花さん» はじめまして。隅っこのお話を見つけてくださって感謝です。のんびり大切に書いていたら随分時間がかかってしまいました(*´-`) 気を長くお待ちいただけたら嬉しいです。 (2016年12月8日 4時) (レス) id: 5db05a964a (このIDを非表示/違反報告)
奈緒(プロフ) - さなえさん» さなえさん〜！いつもありがとうございます( ；∀；) 時間を見つけて書き続けたいものです。どうぞ長〜い首にマフラーを巻いてお待ちくださいませ(笑) (2016年12月8日 4時) (レス) id: 5db05a964a (このIDを非表示/違反報告)
奈緒(プロフ) - まいさん» コメントありがとうございます(^^) とてつもなく遅いお返事ですみません…。のんびりやっておりますが時たま思い出して楽しんでいただければ幸いです♪( ´▽｀) (2016年12月8日 4時) (レス) id: 5db05a964a (このIDを非表示/違反報告)
kei(プロフ) - 待っていました(^-^) 仕事行く前の朝のひととき。慌ただしい気持ちが静かになりました。切ないけど大好きなお話です。また楽しみにしています！ (2016年12月7日 7時) (レス) id: c3893fc157 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：奈緒
| 作成日時：2015年1月25日 20時
