やわらかーく炊いて 3 ページ42
喉を押さえた私に何も言わず
翔くんの瞳はキラキラしてる。
「…翔くん…」
「え？ごめん、聞こえない」
「……」
「なに？A降りてこれない？深夜だし、声出せないから」
「…ごめん、帰って」
「…え？」
「帰って！」
「……」
「…お願いします、帰って」
「……」
「もう3時になるし、朝から仕事でしょ？帰って、お願い」
ヒステリックな声が出て
夜に吸い込まれて消えた。
私を見上げる翔くんが
寂しそうに見えたのは
きっと、願望の投影だ。
「ごめん、こんな時間に」
「……うん」
「素面じゃ来れなくて」
「…えっ？」
「迷惑な酔っ払いだよな。帰る」
「…うん」
「…帰るね」
こんな時間に
こんな住宅街でタクシーが捕まるはずもなくて
翔くんはシャッターの下りた駅の前で始発を待つか
電話でタクシーを手配しなくちゃいけないだろう。
どうして、来たの。
どうして、
私に会いに来たの。
疑問と、恋心。
頭を占めるのは翔くんのことばかりで
それはきっと
賢い彼の思惑どおり。
愛情のような
穏やかさを失い、私から彼への思いは
どうしようもなく燃える、恋心。
忘れないでって、言った。
どうして？
忘れてほしい
と、思うのに
思わなきゃいけないのに
私も、願ってるの。
お願い、忘れないで。
無かったことにしないで。
忘れて。無かったことにして。
忘れたい。無かったことにしたい。
そう思う気持ちのもっとずっと奥で
お願い、忘れないで、って
叫ぶ私は血走った目の鬼の姿だ。
狂ってる。
私は、狂ってるんだ。
こんなに憎くて
こんなに恋しい。
窓から吹き込む夜風も
燃える炎を消してくれない。
風に舞い上がった火の粉は
燃えて、燃えて、
私を焼き尽くしてしまえばいい。
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奈緒(プロフ) - keiさん» お久しぶりです〜！いつもありがとうございます( ；∀；) 私にとっても大切なお話なので、ゆっくりではありますができるだけ進めたいと思います。 (2016年12月8日 4時) (
レス) id: 5db05a964a (このIDを非表示/違反報告)
奈緒(プロフ) - 智花さん» はじめまして。隅っこのお話を見つけてくださって感謝です。のんびり大切に書いていたら随分時間がかかってしまいました(*´-`) 気を長くお待ちいただけたら嬉しいです。 (2016年12月8日 4時) (レス) id: 5db05a964a (このIDを非表示/違反報告)
奈緒(プロフ) - さなえさん» さなえさん〜！いつもありがとうございます( ；∀；) 時間を見つけて書き続けたいものです。どうぞ長〜い首にマフラーを巻いてお待ちくださいませ(笑) (2016年12月8日 4時) (レス) id: 5db05a964a (このIDを非表示/違反報告)
奈緒(プロフ) - まいさん» コメントありがとうございます(^^) とてつもなく遅いお返事ですみません…。のんびりやっておりますが時たま思い出して楽しんでいただければ幸いです♪( ´▽｀) (2016年12月8日 4時) (レス) id: 5db05a964a (このIDを非表示/違反報告)
kei(プロフ) - 待っていました(^-^) 仕事行く前の朝のひととき。慌ただしい気持ちが静かになりました。切ないけど大好きなお話です。また楽しみにしています！ (2016年12月7日 7時) (レス) id: c3893fc157 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：奈緒
| 作成日時：2015年1月25日 20時
