研ぎ汁は白くて掴めない 3 ページ38
寒い。
この家は。
寒すぎる。
智くんは
この家で何回、ひとりで冬を越したの？
それは、私の孤独よりも、ずっとずっと寂しいの？
寒い、寒い。
雨戸が風に吹かれて
不気味にバタバタと揺れる。
1階に降りたついでに
戸締りを確認して、
ストーブを抱えた。
古い家の階段は
急で、一段が狭くて
ストーブを抱えているせいで足元は見えない。
いつものように階段の下にスリッパを脱いで
私の体重が一段一段を鳴らす。
ギィ、ギィ、と階段が軋むと
私の心も軋む気がした。
2階の廊下はオレンジ色の光が灯って
私を智くんの部屋まで導く。
扉を開けると
さっきと同じように眠る智くんがいて
少し離れた場所にストーブを置いた。
ストーブを点けて、水がたっぷり入ったヤカンを置く。
「…これでよし」
暖まる前の部屋は
石油の匂いが少し。
ぶるり、と身体を震わせて、部屋の扉を少しだけ開けた。
「ちょっと寒いけど、だって、なんとか中毒、」
何も考えずに口を突いた言葉が頭を揺らす。
・
「あ、暖房つけたよ」
「サンキュ。さみーな、今日」
「うん。あはっ、翔くん？」
「んー？」
「肩、上がってる」
「寒いから」
「撫でてない」
「うるせー」
「今日ね、会社の暖房全然効いてなかったの」
「故障？」
「さー？エアコンってストーブより効きが悪いよね？」
「そーだっけ？ストーブとか懐かしい」
「会社ストーブにしたらいいのにー」
「無理だろ、あぶねーし」
「何が？」
「火事とかー、一酸化炭素中毒とかー」
「ふーん？」
「あ、エアコン効いてきたね」
「え？まだ寒いよ」
「ほんとかな？」
「なんで疑うの！あ！ちょっと！」
「ほらほら」
「寒いって言ってんのに！」
「暖かくなるから」
「きゃー」
「ほら、」
「あははっ、やだ、翔くん、や、」
「…これでよし」
「もぅ、服、返して」
「A」
「…早くあっためて」
「おいで」
耳元で回る。
低い声。
大好きな。
甘い声。
ぐるぐるぐるぐる。
頭が。
ぐるぐるぐるぐる。
気持ち悪い。
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奈緒(プロフ) - keiさん» お久しぶりです〜！いつもありがとうございます( ；∀；) 私にとっても大切なお話なので、ゆっくりではありますができるだけ進めたいと思います。 (2016年12月8日 4時) (
レス) id: 5db05a964a (このIDを非表示/違反報告)
奈緒(プロフ) - 智花さん» はじめまして。隅っこのお話を見つけてくださって感謝です。のんびり大切に書いていたら随分時間がかかってしまいました(*´-`) 気を長くお待ちいただけたら嬉しいです。 (2016年12月8日 4時) (レス) id: 5db05a964a (このIDを非表示/違反報告)
奈緒(プロフ) - さなえさん» さなえさん〜！いつもありがとうございます( ；∀；) 時間を見つけて書き続けたいものです。どうぞ長〜い首にマフラーを巻いてお待ちくださいませ(笑) (2016年12月8日 4時) (レス) id: 5db05a964a (このIDを非表示/違反報告)
奈緒(プロフ) - まいさん» コメントありがとうございます(^^) とてつもなく遅いお返事ですみません…。のんびりやっておりますが時たま思い出して楽しんでいただければ幸いです♪( ´▽｀) (2016年12月8日 4時) (レス) id: 5db05a964a (このIDを非表示/違反報告)
kei(プロフ) - 待っていました(^-^) 仕事行く前の朝のひととき。慌ただしい気持ちが静かになりました。切ないけど大好きなお話です。また楽しみにしています！ (2016年12月7日 7時) (レス) id: c3893fc157 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：奈緒
| 作成日時：2015年1月25日 20時
