研ぎ汁は白くて掴めない 2 ページ37
投げかけたおやすみに返事はなくて
それでも少し開いた唇から漏れる規則正しい吐息に安堵する。
唇はいつもより乾燥していて
立ち上がったのに、私は、もう一度膝をついた。
智くんのベッドの脇にペタリと座ると
お尻から寒気が全身をまわる。
暖房をつけようか、とリモコンを探そうとして
ああ、だめだ、と思い直す。
カサついた唇に、エアコンは、だめだよ。
「…智くん…」
呼びかけても返事はない。
すぅ、すぅ、と
唇と白い歯の隙間から息が漏れる。
「…ちょっと、下に行ってるからね」
寝てた方がいいのに。
わざわざ声をかけて。
A、って。
行かないで、って。
言って欲しいんだ、私。
そばにいてって、言って。
誰でもいいから。
私に、そばにいてって言って。
「…手、」
眠ってる智くんの手のひらに
重ねた私の手は
握られることはなく
ただ私が重ねているだけ。
そこに智くんの意思はなく
ただ私が離せば
手は離れるだけ。
智くんにも、……翔くんにも
行かないでって
叫びたいのは私なのに。
行かないでって、誰も私に言ってくれない。
私がずっと、ひとりで。
行かないで。
手を離さないで。
ずっとひとりで、声もなく叫んでる。
お願い、私を見て。
必要として。
ひとりにしないで。
同じ言葉を返して欲しくて
私はひとりを選ぶ。
誰か、引き留めて。
そう願いながら
たったひとり、そう、結局、たったひとり。
もう一度立ち上がると
智くんの手の温もりは簡単に消えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 484人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
奈緒(プロフ) - keiさん» お久しぶりです〜！いつもありがとうございます( ；∀；) 私にとっても大切なお話なので、ゆっくりではありますができるだけ進めたいと思います。 (2016年12月8日 4時) (
レス) id: 5db05a964a (このIDを非表示/違反報告)
奈緒(プロフ) - 智花さん» はじめまして。隅っこのお話を見つけてくださって感謝です。のんびり大切に書いていたら随分時間がかかってしまいました(*´-`) 気を長くお待ちいただけたら嬉しいです。 (2016年12月8日 4時) (レス) id: 5db05a964a (このIDを非表示/違反報告)
奈緒(プロフ) - さなえさん» さなえさん〜！いつもありがとうございます( ；∀；) 時間を見つけて書き続けたいものです。どうぞ長〜い首にマフラーを巻いてお待ちくださいませ(笑) (2016年12月8日 4時) (レス) id: 5db05a964a (このIDを非表示/違反報告)
奈緒(プロフ) - まいさん» コメントありがとうございます(^^) とてつもなく遅いお返事ですみません…。のんびりやっておりますが時たま思い出して楽しんでいただければ幸いです♪( ´▽｀) (2016年12月8日 4時) (レス) id: 5db05a964a (このIDを非表示/違反報告)
kei(プロフ) - 待っていました(^-^) 仕事行く前の朝のひととき。慌ただしい気持ちが静かになりました。切ないけど大好きなお話です。また楽しみにしています！ (2016年12月7日 7時) (レス) id: c3893fc157 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：奈緒
| 作成日時：2015年1月25日 20時
