5にん 6 (ページ4)

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聡・マリページ4

風磨side

今日は兄貴と俺が2人で出掛ける日。まぁ、要するに俺の親の命日ってことなんだけど。
「勝利、頼んだよ」
「はーい！夜は食べるよね？」
「食べる予定。」

勝利に見送られて兄貴の運転する車に乗る。俺はね、割りと落ち着いてるよ。自分の過去に対して。20歳になった時に兄貴から、俺が2歳の時に失踪して、5歳の時に遺体で見つかったって聞かされた。

だから本当の命日は誰も知らないんだけど、一応、発見された日ってことになってる。毎年、親父が作ってくれたお墓と遺体が見つかった場所に連れてってもらう。

もう成人してるし、今年は1人で行こうかなとか思ったけど、兄貴が当たり前のように花用意してくれてやってくれてるから。それに、やっぱりお墓はいいけど、現地は怖いし。

「行こっか」
「うん」
まずお墓。兄貴が前を歩いてくれるから着いていくだけ。着いたら、さっと後ろに下がって俺が花を手向けて手を合わせる。何言えばいいかわかんないから、取り敢えず頑張りますってことだけ言う。

兄貴は黙って隣で手を合わせてて、俺が立ち上がるのに合わせて一緒に車に戻る。元々2人の時は3人の話しかほとんどしないから。あんま車でも喋んない。

「風磨、行ける？」
次、崖のある高台に着いたら毎年絶対に確認される。大丈夫かって。それに頷いたら2人で車を下りて歩く。一番上まで来たら、花を手向ける。ここは、花がいつもあって、無料でかけれる電話もある。つまり、そういう場所。

どんな人で、どんな人生を歩んだのか。あんまり知らないし、兄貴もわからないって言ってた。親族で生きてる人がすごい少ないらしい。

お墓より長く手を合わせて、いろんな人の人生を思う。ここで命を絶つしかなかったたくさんの人の。
「君たち、大丈夫か？」
「はい！すぐ戻ります」
兄貴が答えてくれる。ここは、見守る人がいて、この一番上にいる人に声をかける人がいる。ボランティアらしい。

兄貴は、一番上の一歩踏み出せば崖の場所にいる時だけは、絶対に俺の腕を離さない。俺は飛び込んだりしないのに、不安そうに、でも意思の強い顔で反抗期の時でさえ絶対離さなかった。

2人で、兄貴に腕を捕まれたまま階段を下りていく。さっき声かけてきたおじさんが待ってた。
「...手合わせに来たのか」
「はい」
「兄弟？」
「そうです」
「そうか。頑張れよ。最後まで、絶対に生きてくれ。」