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健人side
とっさのことで聡を怒鳴ることしかできなくて、でもマリに絶対聞かせたくない言葉で、とにかくマリのとこに行かなきゃって聡を部屋に入れた。
マリはもう完全に親に捨てられた時のこと思い出しちゃってる。6歳までまともなご飯も与えず、清潔にもしてやらず、自分達の好きなようにマリのこと扱った挙げ句、いきなり日本に連れてきて空港で置き去りにされたマリ。それでいて、ごくたまに旅行に連れていったりしてたらしい。
マリにとったらその一瞬が可愛がられたことがある記憶のはずで、可愛がっても捨てるって言葉は絶対ダメだった。ただ捨てるって言葉の方が数倍マシ。
俺が1番許せない相手。マリの親は。それでも1年に1回連絡してくる。誕生日に会わせろって。断り続けてるけど。マリの唯一の写真は1回だけ1人で会いに行った時に目の前で破かれた。赤ちゃんの頃の写真を探してた時、マリはいいことばっかり覚えてるみたいだった。でも、絶対覚えてる。捨てられたことも、どんな扱いを受けてきたかも。だから塗り替えてあげたくて頑張ってきた。
何回も伝えるけど、抱き締めようとしても逃げられて心が折れそうになる。必死で語りかけるけど目が全てを疑ってる。
タバコの時見捨てるって言って部屋に籠ったことめちゃくちゃ後で後悔した。マリは特別何か思ってるわけでもなさそうだったけど、もうアレは二度としないって決めてる。
何回も思い出を話してやっと抱き締めさせてくれた。心底ホッとして、寝たみたいだから風磨に絶対側を離れないように伝えて聡のとこに行く。
そしたら勝利も不安そうだから抱き締めて、落ち着かせて風磨のとこに行かせた。
「聡、おいで。」
泣いた跡が見えるから言ったら素直に来た。
「大丈夫？」
「んっ！ごめっなさいっ」
「自分で言って不安になったんでしょ？いいよ。説教もお仕置きも後。まず抱っこしよ。」
ベッドに座って言ったら膝に座って抱きついてきた。
「ごめんな。先にマリの方行って。」
嫉妬してたんだな。マリに。聡との時間も取るべきだった。
「世界で1番聡のことが好きだし、愛してる。どんな時でも絶対味方。側にいるよ。」
ただ泣きながらしがみついてくる。
「優劣なんてない。皆のことを横一線で同じだけ愛してる。」
「知ってる。ごめんなさい。わざと傷付けたっ」
「大丈夫だよ。大丈夫。」
「はんせっするからっ捨てないでっ」
「捨てない。もちろん。反省してもしなくても捨てない」
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作者名：ゆう | 作成日時：2022年2月10日 1時
