線香花火

Day 1 ページ8

いよいよ今日だ。
有名人が来る日。



チェックインは11時。滞在期間は1週間。
予約の名前は、三本松様。



業務内容はいつもと変わらないのに有名人というだけで
何だかソワソワしてしまう。
隣に立つ広斗さんにちょっと笑われてしまった。



｢来られたぞ、｣



フロントの自動ドアから見えた男性10人。
全員若い、誰だろう。



近くで顔を確認したい気持ちを抑えてしっかりお辞儀をする。
この1週間でホテルの固い接客も慣れてきた。



フロント業務は広斗さんに任せ、あたしは今回
ベルアテンダントを担う。
と言ってもまさか10人分の荷物は持てないから
案内するだけになってしまうが。



｢｢いらっしゃいませ｣｣


ぼ｢うっす、お世話になります｣



ワイワイ、ガヤガヤ。
大学生のような勢いで彼らが流れ込んでくる。
ちょっとぽってりした方が三本松様だろうか、
後ろが騒がしい中真面目に広斗さんの説明を聞いている。



｢お姉さん可愛いすね！｣


｢おいいきなりやめろひゅうが、いやーお姉さん綺麗すね！｣


｢やまとも人の事言えねぇじゃねぇか笑｣



髭を生やしたワイルドめな方と、
どこか見たことあるような気がするセンター分けの方。



有名人と言ってもテレビを見ないあたしは
いまいちこの方達が誰なのか、失礼ながらピンと来ない。



｢では、そこにいる柊がお部屋の案内をさせていただきます｣


｢イケメンご一同様、こちらです｣


｢わぁ、イケメンだって照れんだけど！｣


｢確実にお前は外れるよぼん｣


｢バカかお前誰が予約取ったと思ってんだ｣



……髭の方、面白い。笑
背中に彼らの声を聞きながら笑いを噛み殺す。



後で広斗さんにお名前を聞こう。

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