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__end. ページ48

5分程歩き続けた。
何かに追われているような必死な形相をしても
周りが不審に思うことは無い。



それが東京だから。
いつでも人の多い東京は
他人を気にして歩いていられない。



少し足の速度を緩めたら、喉が乾いたことに気づく。
あのまま順調に駅に向かっていれば今頃最寄りに着いたのに。
しょうがなく目に付いたコンビニに入った。



コンビニにしては珍しく、人が少ない。
お弁当売場をうろつくサラリーマンの横を抜けて
ドリンクが並ぶ棚へ。



水にしようか、お茶にしようか。
暑いし炭酸?コーヒーでも…



『何飲むの?』



後ろから、声がした。
逃げてきた場所にいるはずの…よく知った声。



振り向けない。
あの日と同じく、固まったみたいに。



『髪、明るくしたんだね』



足音が近づく。
気配が濃くなる。
香りが、届く。



あたしの隣に立ったその人は、ゆっくり棚を開けた。



『俺が買うよ。選んで?』


「…何で居るの、」



本能が押し寄せる。
早くて激しい、濁流が。



『ぼんに聞いて、走ってきた』


『俺運動出来ないけど体力はあるからさ笑』



飲み物なんてどうでも良くなっていた。
適当に手に触れたお茶を持ち上げればそれを彼が奪い取って
スタスタとレジに通す。



ぼーっと立っていたあたしの背中を押して、人通りの少ない路地へ。



『あのさ、ちゃんと確認するために顔見てもいい?』



うん、と頷いたあたしの目の前に彼が移動する。
そして1歩、距離を縮められる。



遠慮がちに伸びてきた手があたしの頬を包んで
上に向けられた。



2か月ぶりぐらいに見る彼は、金髪だ。



『はは、Aだ』


『よかったぼんが間違えてなくて』



統制していたものが全て消えていく。
触れられている頬が熱を放ち、全身へその熱を運ぶ。



『会いたかった。俺ちゃんと探さなかったんだよ』


「…うん、」


『呼んでよ、俺の名前』



もういい。
もう、素直になろう。



「……やまと。会えて、嬉しい」



目を丸くした彼が、その次には満面の笑みを浮かべて。
あたしの腰を抱き寄せた。



『俺もだよ、A』



結局置いて行けなかったあの指輪。
今もポケットの中にあるソレが、引き合わせたのかも
しれない。



置いてかなくて、よかった。





________________________完

あとがき→←__



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乃愛(プロフ) - この恋は線香花火 で三代目!?って思って飛んできました!作者さん天才ですか😭 (8月16日 22時) (レス) @page22 id: 097daf5ae9 (このIDを非表示/違反報告)
???(プロフ) - このお話めっちゃ好きです‼︎‼︎‼︎! (8月16日 10時) (レス) @page49 id: 860ce47928 (このIDを非表示/違反報告)
яeu(プロフ) - ねさん» 読んでいただきありがとうございました。ネタが思いつかなくなってしまったので当分お休みしてしまうと思いますが、再開したらまた宜しくお願い致します。 (2022年9月4日 0時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
яeu(プロフ) - 紫陽花さん» 聴きながら読んでくださったんですね、とても嬉しいです。またこの夏のやまとくんに会いに来てくださいね。 (2022年9月4日 0時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございました!お疲れ様でした!これからも作者様のお話が読めますように!🙏 (2022年9月3日 14時) (レス) @page49 id: b58a06d955 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:яeu | 作成日時:2022年7月31日 22時

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