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たこ焼きを無事受け取り
ちょうど空いていた木の裏のベンチへ腰かけた。
これなら彼の顔は見えないし、如何にもカップル用に
作られた風なのでひとまずバレないだろう。
『姫、まず俺が毒味するからね』
「その呼び方はやめたまえ」
『王子、先にわたくしが毒味を』
男らしくどかっと座っていた彼が内股でもじもじし出す。
その変わり様が面白くて思わず笑ってしまった。
『はぁっ、いけません王子!
そのような笑顔を向けられては…私の心臓が持ちませんわっ!』
「いいから早く食べてよ、」
『はいすみません』
あ、とこっちに向かって大きく口を開ける。
手はだらんとぶら下がったままなので
自分で食べる気は毛頭ないらしい。
社長という肩書きに似合わず甘えんぼなのだろうか。
らしいところを見ていないから、あたしにはその肩書きの方に
違和感を覚えるけど。
大きめのたこ焼きをひとつ口の中に突っ込んでみる。
入りきらなかった鰹節が宙に舞い、虚しく地に伏した。
『あふい、あふいあふい』
必死にハフハフと空気を送り込んでいる。
そりゃあ、熱くなかったらたこ焼きじゃない。
『おいひいへどあふいはら、ひをつへて』
「なんて言ってんのか分かんない笑」
『ちゃんほ、ふーふーしてはら食べなよ!』
忠告を有難く受け取り、あたしの口に運ぶ予定のものを
まず真っ二つに割った。
割った片割れを摘むと、やまとさんが顔を近づけて
フーフーと息を吹きかける。
まだ口の中に残ってるだろうに。
「ありがと笑」
『ん!』
食べたそれは、確かに熱かった。
でもそれ以上に、涙が出るほど美味しかった。
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乃愛(プロフ) - この恋は線香花火 で三代目!?って思って飛んできました!作者さん天才ですか😭 (8月16日 22時) (レス) @page22 id: 097daf5ae9 (このIDを非表示/違反報告)
???(プロフ) - このお話めっちゃ好きです‼︎‼︎‼︎! (8月16日 10時) (レス) @page49 id: 860ce47928 (このIDを非表示/違反報告)
яeu(プロフ) - ねさん» 読んでいただきありがとうございました。ネタが思いつかなくなってしまったので当分お休みしてしまうと思いますが、再開したらまた宜しくお願い致します。 (2022年9月4日 0時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
яeu(プロフ) - 紫陽花さん» 聴きながら読んでくださったんですね、とても嬉しいです。またこの夏のやまとくんに会いに来てくださいね。 (2022年9月4日 0時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
ね(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございました!お疲れ様でした!これからも作者様のお話が読めますように!🙏 (2022年9月3日 14時) (レス) @page49 id: b58a06d955 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:яeu | 作成日時:2022年7月31日 22時