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30分のタイムアタック。
結果は3分オーバーというところ。



気持ちは20分で終わったのだが
毛量の多い髪がなかなか言うことを聞かなかった。
急ごうにもこの可愛い浴衣が邪魔して全然走れんし。



「ごめんお待たせ、!」



さっきと同じ椅子に座っていたやまとさんは
少しも気にとめていない様子で笑った。



『可愛い、めっちゃ可愛いじゃん!似合ってるよ』


「そ、それはよかった…」


『はー楽しみ、行こっか』



立ち上がる彼がいとも簡単にあたしの右手を奪う。
それはダメだろうと手を引っ込めるが、遅かった。



あたしの両手が収まりそうなぐらい大きく
それでいて綺麗な手。
彼に手を握られた女はたとえひとときの夜であっても
幸せだっただろうな。



『なんか、今更なんだけど俺と行くの嫌じゃない?笑』


「…嫌だったら行かないよ」



ふふ、そっかーと嬉しそうな声。



数日後には全て忘れなければいけないのに
心がいちいちシャッターを押して切り取る。



表情も声も彼と繋がった手も、聞こえてくる祭囃子も
出店の匂いも、カランコロンと鳴る下駄の音も。
理性に反して記憶に焼き付いていくのだ。



東京に比べれば少ないが、それでも歩けば
肩が擦れるくらいには混みあっていた。



ここに飛び込むことは祭りを楽しみにしている彼にとって
自分の首を絞める行為ではと一瞬立ち止まる。
人間は毎年見られる綺麗なものより
希少価値の高い人間の方が好きだから。



けどそのあたしを引っ張ったのは、紛れもなく彼だった。



『行こうよ、せっかく来たんだから』


「でもバレたら」


『大丈夫。祭りに夢中で他人なんか見てないよ』



彼と祭りの誘惑に、勝つことは出来なかった。

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乃愛(プロフ) - この恋は線香花火 で三代目!?って思って飛んできました!作者さん天才ですか😭 (8月16日 22時) (レス) @page22 id: 097daf5ae9 (このIDを非表示/違反報告)
???(プロフ) - このお話めっちゃ好きです‼︎‼︎‼︎! (8月16日 10時) (レス) @page49 id: 860ce47928 (このIDを非表示/違反報告)
яeu(プロフ) - ねさん» 読んでいただきありがとうございました。ネタが思いつかなくなってしまったので当分お休みしてしまうと思いますが、再開したらまた宜しくお願い致します。 (2022年9月4日 0時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
яeu(プロフ) - 紫陽花さん» 聴きながら読んでくださったんですね、とても嬉しいです。またこの夏のやまとくんに会いに来てくださいね。 (2022年9月4日 0時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございました!お疲れ様でした!これからも作者様のお話が読めますように!🙏 (2022年9月3日 14時) (レス) @page49 id: b58a06d955 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:яeu | 作成日時:2022年7月31日 22時

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