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聞こえないフリをするには
ちょっと無理のある大声だ。
近寄ってくる足音に比例してあたしの足は逃げ出したくなる。
『Aちゃん明日もバイト?』
あっという間に隣に肩を並べる彼に、せめてもの抵抗で
顔を見ないようにする。
失礼にあたらないよう首は向けるが視線はホテルの壁だ。
「はい。そうです」
『今2人なんだから敬語ナーシ、』
「カメラがありますのでそういうわけにいきません。
ところで何の御用でしょう」
さっさと聞いてさっさと立ち去りたい。
制服も窮屈だし、心の面も窮屈。
ずっと彼の近くにいたら、気づいてしまいそう。
ガサゴソとポケットを漁りはじめた彼は、程なくして
小さく折り畳んだ1枚のチラシを取り出した。
あたしも知っているものだった。
『これ、一緒に行きたいなって思ったんだけど』
広斗さんと話していたお祭り。
どこで手に入れたのか全く同じものが彼の手の中にある。
というかそれよりも。
今やまとさんが言ったことは…
「あたしと?何で」
『どうしてもバイト?』
質問に答えない。
焦点をずらした視界でははっきりとは見えないが、それでも
彼は今真剣な眼差しのように思える。
「バイト…だね」
『そっか…じゃあしょーがない』
元通り折られてゆくチラシがポケットに吸い込まれる。
やまとさんから出る悲しげな雰囲気に
なぜか申し訳ない気持ちになった。
仮に本当にバイトがなくったって、
有名人がお忍びで祭りに来るのは無理がある。
花火大会があるなら尚更だ。
花火を見てるのか人を見てるのか分からないレベルの
人口密度が高い場所に一緒に行くのはリスクしかない。
そう思いこんで、エレベーター前で手を振る彼に
会釈だけを返した。
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乃愛(プロフ) - この恋は線香花火 で三代目!?って思って飛んできました!作者さん天才ですか😭 (8月16日 22時) (レス) @page22 id: 097daf5ae9 (このIDを非表示/違反報告)
???(プロフ) - このお話めっちゃ好きです‼︎‼︎‼︎! (8月16日 10時) (レス) @page49 id: 860ce47928 (このIDを非表示/違反報告)
яeu(プロフ) - ねさん» 読んでいただきありがとうございました。ネタが思いつかなくなってしまったので当分お休みしてしまうと思いますが、再開したらまた宜しくお願い致します。 (2022年9月4日 0時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
яeu(プロフ) - 紫陽花さん» 聴きながら読んでくださったんですね、とても嬉しいです。またこの夏のやまとくんに会いに来てくださいね。 (2022年9月4日 0時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
ね(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございました!お疲れ様でした!これからも作者様のお話が読めますように!🙏 (2022年9月3日 14時) (レス) @page49 id: b58a06d955 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:яeu | 作成日時:2022年7月31日 22時