線香花火

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｢先に上がります、お疲れ様でした｣



朝10時から夜19時。
1時間昼休憩を挟んだ8時間勤務。
先週はこのスケジュールに死んでたが、
今はだいぶ慣れて上手くこなせるようになってきた。



レストランに入り、賄いを貰ってから部屋へ帰る。
8畳ほどのここは1人で使うには十分な場所。



元々家に帰るのがめんどくさかった
雅貴くんが使ってた部屋らしい。
今では現場にいることがなくなったから空き部屋になったと。



なかなか豪華な賄いを食べながらインスタを開くと
友達のストーリーは大体ディズニーか海が載っている。
あたしも、ここに呼ばれなきゃ行ってたのに…



1人で行く海なんて虚しいったらありゃしない。



そういえば屋上にプールがあったな。
ここに来てから1枚も写真撮ってないし、
プールなら虚しさが半減しそう。



夜の12時を過ぎれば誰もいないだろう。
足つけるぐらいなら、いいよね。



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携帯がちょうど0時を示す頃、部屋を出る。
きっと隣では広斗さんが寝ているだろうから
気を使って足音を立てないようエレベーターまで歩いた。



屋上に上がると、予想通り誰もいなかった。
ここに泊まるのは観光客がほとんど。
長旅で疲れた体を夜のプールに放り込もうとは
あまり思わないだろう、という予測が当たった。



プールサイドに座って恐る恐る足をつけてみる。
日中太陽の下に晒され暖まっているはずなのに
水はちゃんと冷たい。



涼しい夜風とライトアップされた誰もいないプール。
何だかモデルになったみたいで、何枚も写真を撮っていた。

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