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「むっちゃ美味しいわ。
俺の目に狂いは無かったっちゅうことやな。
んで、さっきの続き、なんやったっけ?」
食べ進めながら聞いてくれるけど、俺は一度フォークを置いて、康二の方を向き直る。
「康二とめめが良い雰囲気だと思うって話で。」
「せやったせやった。」
「だけど俺、部活が終わったら、もう佐久間と仕事以外の時間で会えなくなるんだって気付いて。」
「なるほどな。」
「別れる時、一緒にいない方が自分達のためって二人で答えを出したのに、やっぱり一緒にいたいなんて、佐久間にとって迷惑な話なのは分かってる。
けど俺、一緒にいたくて。
それで…、康二を心配する振りして、時間稼ぎしようとした。」
冷静に考えて、裏切り者だよなぁ、俺って。
そしてそれから、気まずさを誤魔化すようにコーヒーを口にする自分は、どこまでいっても卑怯な奴、なんだろう。
「そうやったとしても、今の阿部ちゃんが一番自分の気持ちを伝える怖さを知ってるやん。
せやから俺を心配する気持ちも、嘘やなかったんやろ?」
「それは…、嘘では無いよ。
告白なんてしろって言われて出来るもんじゃない。
でも最終的には自分のためにそうしたんだから、やっぱり俺は、康二の告白の邪魔をした裏切り者でしかないんだと思ってる。
だから、ごめん。」
もう一度頭を下げる。
すると康二が慌てた様子で
「カフェでそんなんせんとってや。
むっちゃ目立つで。
それに恋愛成就部は心強くて沢山頼ってもおたし、アドバイスは大事にするけど、告白っちゅう最終地点の責任くらい、自分でもつ。
せやから阿部ちゃんが負い目を感じることは一つも無いのよ。」
「一つもって、そんなわけ」
「阿部ちゃんは真面目過ぎるんやって。
約束も、自分なりの結論も大切やけど、人間もっとその場の感覚で動くし、都合よく気持ちも変わんねんで。」
都合よく、か。
「正に都合よく気持ちが変わって、また近付きたいと思っちゃったんだよ。
でもやっぱり駄目だった。
この有り様だよ。
だからもう、佐久間とはこのままおしまい。
恋愛成就部も、中途半端なまま終わることになるよね。
本当にごめん。」
そう言う俺に、康二はにこりと笑った。
「恋愛成就部の件は、まあ、保留ってことで。
めめのことで相談のってもらったりまたしたくなるかもしれへんもん。」
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よよよ - 初めまして!結構長く丁寧につくられていた作品でしたがもう面白すぎすぐに読み終えてしまいました!文章やストーリーに引き込まれてしまいもう素晴らしいです。オチの感じもすごく良くて一つ一つの表現が美しく綺麗で感動しました!素敵な作品をありがとうございました (2023年1月17日 9時) (レス) @page23 id: 8aa624da18 (このIDを非表示/違反報告)
葉子(プロフ) - 菜那香さん» 初めまして、こんにちは!美しさ、ですか!?初めて言っていただいたかもしれません…!ありがとうございます。しかも泣いてくださっただなんて…!そう言っていただけると一生懸命書いて良かったなと思えます。他のお話もそう思っていただけるよう今後も頑張ります! (2021年4月14日 7時) (レス) id: f3c5f4857a (このIDを非表示/違反報告)
菜那香(プロフ) - さくあべのあまりの美しさに涙が出てきました...!素敵な作品をありがとうございました!! (2021年4月14日 0時) (レス) id: c1db9a1b15 (このIDを非表示/違反報告)
葉子(プロフ) - ハルさん» ありがとうございます!そしてそのセリフ覚えていてくださったんですね!?そうなんです、あのセリフから最終話に飛びました(笑)まさかそんな前の話まで覚えていてくださるとは!個人的なお遊び要素でしたが一緒に楽しんでいただけて嬉しいです!読み返しも感激です…! (2020年10月25日 22時) (レス) id: f3c5f4857a (このIDを非表示/違反報告)
葉子(プロフ) - さーこさん» お久しぶりです!お仕事でお疲れの中この量を一気読みだなんて…!だ、大丈夫でしたでしょうか…。そしてありがとうございます…!泣いていただけたなんて、私がその言葉に猛烈に感動です。疲れた時には涙活がいいみたいなので、少しでもお役に立てていたら嬉しいです! (2020年10月25日 22時) (レス) id: f3c5f4857a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葉子 | 作成日時:2020年10月14日 22時