＊ ページ13
「そうなんだ。」
動揺していることを悟られないように、平静を装って相槌を打つ。
そしてなんでもない道のように、康二と並んで歩いていく。
まあ桜並木と言っても、秋だから花なんか咲いてるわけないし、葉っぱでさえ緑色ですらない。
そんなだから歩いていたってこの道の話題になることなんて無いし、足を止める人もいない。
佐久間に告白された時は桜が満開だったから、あの時の記憶と比べると寂しいもんだ。
でも今の俺には、きっとこれくらいがお似合いってことなのかな。
「あー、あれやない？
ほら！」
桜並木を抜けたところに、それっぽい建物が見えた。
見つけた康二は嬉しそうにしている。
「ああ、あそこっぽいね。」
そちらの方へ向かって、真っ直ぐに歩いていく。
そうすれば、桜並木はすぐに終わりを迎えた。
そこでふと、立ち止まって振り返る。
沢山ある桜の木は、そのどれもが幹も、残った葉も、全て茶色だった。
今日この後、康二にこの前のことを改めて謝る。
許してもらえるか見放されるかはまた別問題としても、この件はそれで一旦区切りを迎えることになるだろう。
状況が分かった康二なら、恋愛成就部も終わらせてくれるはず。
そうすれば、付き合っていた時期だけじゃない。
つい数日前までの佐久間との思い出も全部、セピアカラーの色褪せた過去になる。
だいたい、部活をいいことにずるずると一緒にいすぎたんだ。
あまりに欲張りになりすぎた。
いくら綺麗な色だって、枠からはみ出して塗ってしまえば、それは汚いもの扱いされてしまうというのに。
だから、これまでの全てのことが、色褪せて、日に焼けて、いつかきっと、白くなってほしい。
どれが何色だったかなんて、分からなくなるほどに。
さようなら。
カラフルだった、二人の日々。
桜並木に背を向け、もう一度、歩き出した。
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よよよ - 初めまして！結構長く丁寧につくられていた作品でしたがもう面白すぎすぐに読み終えてしまいました！文章やストーリーに引き込まれてしまいもう素晴らしいです。オチの感じもすごく良くて一つ一つの表現が美しく綺麗で感動しました！素敵な作品をありがとうございました (2023年1月17日 9時) (
レス) @page23 id: 8aa624da18 (このIDを非表示/違反報告)
葉子(プロフ) - 菜那香さん» 初めまして、こんにちは！美しさ、ですか！？初めて言っていただいたかもしれません…！ありがとうございます。しかも泣いてくださっただなんて…！そう言っていただけると一生懸命書いて良かったなと思えます。他のお話もそう思っていただけるよう今後も頑張ります！ (2021年4月14日 7時) (レス) id: f3c5f4857a (このIDを非表示/違反報告)
菜那香(プロフ) - さくあべのあまりの美しさに涙が出てきました...！素敵な作品をありがとうございました！！ (2021年4月14日 0時) (レス) id: c1db9a1b15 (このIDを非表示/違反報告)
葉子(プロフ) - ハルさん» ありがとうございます！そしてそのセリフ覚えていてくださったんですね！？そうなんです、あのセリフから最終話に飛びました(笑)まさかそんな前の話まで覚えていてくださるとは！個人的なお遊び要素でしたが一緒に楽しんでいただけて嬉しいです！読み返しも感激です…！ (2020年10月25日 22時) (レス) id: f3c5f4857a (このIDを非表示/違反報告)
葉子(プロフ) - さーこさん» お久しぶりです！お仕事でお疲れの中この量を一気読みだなんて…！だ、大丈夫でしたでしょうか…。そしてありがとうございます…！泣いていただけたなんて、私がその言葉に猛烈に感動です。疲れた時には涙活がいいみたいなので、少しでもお役に立てていたら嬉しいです！ (2020年10月25日 22時) (レス) id: f3c5f4857a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葉子
| 作成日時：2020年10月14日 22時
