無限大な日々短編集 (ページ28)

今日:8 hit、昨日:1 hit、合計:19,908 hit

・ページ28

ある時、マルが気に入った本のカバーを手作りして遊ぶようになった。そこで俺たちは、子供のようなイタズラを考えた。教師になったヒナは、新書の新刊が出ると買いに来る。それに合わせて、俺たちはこれまで貯めた付箋からそれっぽいものを選んで新書と同じデザインでカバーを作り、白紙の小説に被せて、偽小説を作った。やってきたヒナに、この中で本物を見つけろ、と言ってみると、ヒナは見事にマルのタイトルを選び、俺とマルはイタズラが上手くいったことに喜んだ。

その時ちょうど、初めて見る客が入ってきた。大学生のような見た目の、背の高いイケメン。相手が若かったこともあり、テンションの上がっていた俺とマルはイケメンにも問題を出した。彼は3冊目で俺のタイトルに騙され、非常にいいリアクションを見せた。思わず煽ってしまったのだが、少し怒ったような態度を見せた彼に、俺とマルは我に返った。初対面の客に何をしているのか。あわてて謝って、お詫びにと彼の好みの本を選び、半額で売った。彼は機嫌を直したようだが、きっとこんなめちゃくちゃな店にはもう来ないだろう。せっかく新しいお客だったのに。そう思ってマルと落ち込んで反省した。

しかしイケメンは翌日また店にやってきた。

倉「昨日勧めてもらったこの本、めっちゃ面白かったっす。本は好きやけど、最近ここまで掴まれる作品見つけられなかったんで、めっち嬉しくて、お礼言いに来ました。また、本選んでくれませんか？」

俺とマルは大喜びした。この日からイケメン…大倉は、真実堂書店の常連になった。

・→←・