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そう言って、本の発注の書類を眺めていると店の戸が開く音がして、詰襟の制服に身をつつんだ中学生くらいの少年が入ってくる。
少年は暫くキョロキョロと棚を見渡して、それからカウンターに近づくと言った。
少「あの、読書感想文を書かなあかんねんけどオススメの本とかありますか？」
「おう、読書感想文な。自分本は読むんか？」
少「ちょっとしか読まないです。漫画は好きです。」
「漫画はどんなん読むねん。」
少年が名前を並べたのはどれもストーリー性に優れた漫画で、派手なアクションやらは出てこず、セリフを読み解くのが楽しい作品だ。ならばきっと文章が読みやすければ多少歯ごたえのあるストーリーの方がいいだろう。思案しながら棚を眺め、少年に質問をして彼の好みをさぐっていく。
5冊ほどをカウンターに並べて、少年に軽く読んでみるよう促す。
少「…これ、面白そう。最初からめっちゃ気になる。こっちもええな…」
本はあまり読まないといいつつきっと彼は読書を気に入るだろう。そんな気がした。
「どれか1冊買うか？自分学生やから、特別に取り置きしといてもええで。店内から持ち出さんかたらいつでも読みに来てええ。」
少「いいんですか!？…じゃあ、これ、買います。他のやつ、また夜見に来ます。」
「はい、まいどあり。ここは誰から聞いてん？」
少「ヒ…えっと、担任の村上先生です。」
「やっぱり、笑。ヒナでわかるからええで。本、気にいったらヒナに言うたり。あいつあんな顔して読書趣味やから、本の感想の話すんの好きやから。」
少年は明るく頷いて、買った本をカバンに入れて店を後にした。
本を選ぶのは楽しい。俺が沢山読んで知っている色んな本を、多くの人は知らない。だから、人の好みを把握して本を選んで、本の世界への入口に立つ手助けをする。それが楽しい。小さい本屋だが、きっとお客のお気に入りを1冊選んでやれる。それが、真実堂書店。
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作者名：らむ倉 | 作成日時：2020年8月31日 17時
