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原稿用紙はみるみる埋まっていく。暫く書き続けて手を止める。うん、これで導入はまとまった。少し戻って軽く読み返す。
『おもんないな。繋がりがしっくりけぇへん。伝わらん。違和感しかない。やめてまえや。』
耳元で囁かれたような感覚。ああ、始まった。少し震える手を抑え、深呼吸をする。違和感を感じるのはこの一文から次への飛躍がデカすぎるからだ。視点の切り替わりが伝わるように補足すればいい。少し考えて、1文に縦線を引いて横に新たな文章を書き足す。
うん、これでええ。大丈夫。おもろいから。
大丈夫だ。まだ書ける。続きを書き始める。だけどしばらく書いて手が止まる。
『おもんないて。前置きがしつこい。女の感情なんわからん癖にわかったような書き方をしてんのが腹立つ。キモチワルイ。』
「…っぁあ！！う、るさいっ！！」
右後ろの空間にいる何かを突き飛ばすように拳を振る。当然なんにも当たらず、勢い余って手に握った鉛筆が飛んでいく。
「はぁっ…くそ…」
両手で顔を覆い、机に顔を伏せる。鉛筆を離してしまったら完全にスイッチが切れてしまうので今日はもうこれ以上は書けまい。暫くじっとしていたが、やがて立ち上がり、原稿用紙を束ねて角を揃え、クリップで端を止めて纏め、付箋をつける。付箋にタイトルを書いて部屋を出る。
冷蔵庫のコーヒーをとって1階に降りて、店のカウンターに座る。お客はひとり。
丸「すばるくん、おかえり。ええお話思いついたん？」
「まぁな…」
丸「えーや〜ん〜書きたくなったらいつでも上行ってええからね！」
「ありがとう、まる。まぁ今日はおしまいやと思う。」
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作者名：らむ倉 | 作成日時：2020年8月31日 17時
