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目は閉じたまんま
だけど倫也さんの口角がちょっとだけ上がった気がした...
わたしは繋がれてる倫也さんの手をゆっくり離して起こさない様にゆっくりベッドから降りた。
立ち上がってみるとそのいいかんじに着古された倫也さんのグレーのフーディーはわたしの体をすっぽり包んでた。
髪の毛を適当にお団子に結び直してリビングへ移動してチラッとソファーを視界に入れたらさっきまでの感覚がぶわっと広がって鼓動が早くなるのを感じた...
しゃがみながら自分のショルダーに入っているミネラルウォーターを口にして冷静さを取り戻しているとバッグの底の物が視界に入った...
...結局いつまで持ち歩いてんのよ.....あたし...
少しだけため息をついてゆっくり立ち上がってベッドルームへと戻ろうと足を向けた...
扉の近くからベッドを覗けば相変わらず幸せそうに眠る倫也さん
その視界の端にはピアノが入り込んで
わたしは徐にピアノの前の椅子に腰掛けた。
鼻歌まじりで本当に小さな声で歌う...あの曲...
今のわたしなら100の気持ちで差し出す事ができるだろうか...
ずっと歌えないと思ってたけど
今の...わたしなら...
『...いい曲。』
ハッとしてベッドの方に視線を向けると真上を向いたまんま目も開いてない倫也さん
けど...小さな声で...今...
「...すいません、起こしちゃいましたよね。」
わたしも小声で返すと、
『...俺、死んだのかと思った..、、なんか天使みたいな歌声が聞こえるし薄目の先にも膝抱えてる天使が見えたし...』
「...え?」
『良かった...生きてたわ。』
「...倫也さん?笑」
『...もっかい歌ってよ。その曲...。』
そう言って体勢を変えた倫也さんは片肘をついて少しだけ眠そうな目でこっちを向いた...
今なら...
ううん...今を逃したら...
この曲は誰の耳にも届かないまんまわたしのバッグの底で永遠に眠ることになる...
「...倫也さん...。...倫也さんのお家は防音ですか?」
『...うん、だって外の音聞こえないしょ?』
「...じゃあ..ピアノ...少しだけ借りてもいいですか...?」
『是非。』
「...ありがとうございます。」
わたしはくるっとピアノ側に体を向けて
長い袖口を捲し上げて
ゆっくりと目を閉じた...
わたしは
わたしの為にも
倫也さんの為にも
この曲を無かったことにして捨ててしまうなんて
きっとダメだって...
そう思ってゆっくりと目を開いた...
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RJS(プロフ) - あきらさん» あきらさん☆コメント下さりとっても嬉しいです!わたしも皆様のお気持ち考えたらどうなのかなぁと悩みましたが前向きな意見が頂けて本当に嬉しく思います!せっかく皆様と繋がれた場なので大切にしていきたいです。なのでこれからも是非、宜しくお願いします!! (2023年3月26日 14時) (レス) id: acf635abfc (このIDを非表示/違反報告)
RJS(プロフ) - ゆんさん» ゆんさん☆いえいえ、むしろこのタイミングでコメント下さった事にとっても感謝してます!わたしは書き続けたいと思ってますがどうすべきなんだろう...と悩んでましたT^T読みたいと思って下さる方も居るんだととっても勇気もらいました☆本当にありがとうございました! (2023年3月26日 14時) (レス) id: acf635abfc (このIDを非表示/違反報告)
あきら(プロフ) - このお話は素敵なので是非続いて欲しいです!でもどうされるんだろう..の方が強くてコメント出来ませんでしたが、更新ありがとうございます。ひとつの物語として応援しております! (2023年3月26日 13時) (レス) @page42 id: 05facd4420 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - こんなタイミングで初コメント失礼します。このお話が大好きなので、現世はおいといてお話が続くといいなと思ってます。 (2023年3月25日 13時) (レス) id: e23f47c4dc (このIDを非表示/違反報告)
RJS(プロフ) - あおさん» あおさん☆コメントありがとうございます♡素敵と思って頂けて本当に嬉しいですっ!のろま更新で申し訳ありませんがこれからも是非宜しくお願いします!! (2023年2月16日 14時) (レス) id: acf635abfc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RJS | 作成日時:2023年2月6日 9時