四月の夜は。-7-

313. ページ13

...その後の事

結局少し肌寒かったのなんてほんの一瞬で

上がり続ける体温にぽわぁ〜っとわたしを纏う幸せな空気

触れられる全ての部分があたたかくてすごく心地が良くて

下から見上げる倫也さんはすごく綺麗で

ガサッと脱ぎ捨てたTシャツがソファーの下にストッと落ちた



時折

『痛くない...？』

とか

『体勢辛くない？』

って小さく聞いてくれて

「...うん。」

ってポーってしながら答えると

必ず少し優しく微笑んで小さくキスをくれた...


重なる肌の感覚は

今まで感じた事がないくらいで

体の力が全部抜けていくような気持ちになった...


優しい感覚も

愛しい苦しさも

度を超えたように高揚した気分も


全てがわたしの全てに浸透して

頭の中も

目の前も

真っ白になっていった...


穏やかな靄がかかったような鈍い視界の先に見えた倫也さんの表情が

切ない様な....苦しい様な...

そんな風に見えて

手を伸ばして引き寄せてキスをした...









その直後の

体を貫通するような圧迫感と目がチカチカするくらいの電気が走ったみたいな感覚...


そんな人生初の感覚に一瞬目が覚めて


...けど

そのすぐ後にわたしを包んで離さない波はゆっくりと深く
わたしを真っ白な世界へと連れ去っていったんだ.....



















...ポコポコポコポコ......


耳に届く心地よい水槽の気泡の音


まだちゃんと開かない瞼の目尻に違和感を感じて触ろうとすると着ているグレーのフーディーの大きさに手が出なかった..





......夢..じゃ..ない？！



ゆっくり首を動かすと隣でスースーと寝息を立てながら眠る倫也さんが居る...






...夢..じゃ..ないよね...







でも...

...あれ...私たち..あっちのソファーで....



いつベッドに来たんだろ...



時計を見れば3時を回ったあたりで

部屋はさっきとおんなじで



だけど

圧倒的に違う事は

隣で眠る倫也さんの片手がわたしの手を握りながら眠ってるっていうこと...

間近で見る倫也さんの寝顔はあの夏の撮影の日と同じで

やっぱりわたしは吸い込まれる様にその寝顔に見入ってしまう...


長いまつ毛にスッと綺麗な鼻

少し尖った唇の先に眉毛の上のホクロ



今この時間


わたしだけが見れている世界


顔にかかった髪に少しだけ触れて


寝息をたてるあなたの唇に



ひとつ...小さなキスを落とした...

314.→←312.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す