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「わたしがちゃんとやったこともない演技なんてできるわけないでしょ。」
『いや、わたしはAはできる子だと思う。歌ってる時とね、ピアノ弾いてる時のAはすっごい良い顔してるんだよ?知らないと思うけど♪』
「それはその曲に入ってるからでしょ。」
『一緒だよ!それと一緒!その世界に入るんだよ。』
「一緒じゃないでしょーよ!マナがやってることは凄い事なんだよ。いつも尊敬してるよ?ほんとにその人になりきってて凄いよ。」
マナの演技は本当に凄い。
どんな世界感にでも入り込めてすごく自然で
そんな女優としてのマナも大好きで
だからマナの出る作品は全てチェックしていた。
『...凄くなんてないよ。』
急に泣きそうに笑うマナ。
「...なんか、あったんでしょ?」
そう言うと、
『...ううん、本当になんもないよ。...たださ..今の現場が凄い俳優さんと女優さんばっかりで。なーんか自分がちっぽけに見えてきて。同世代も居ない現場だからなんかちょっとだけ寂しくなっちゃっただけ!次の作品は同世代の話だったし、主人公の名前が【A】だったからなんとなーくAと仕事できたら楽しそうだな〜って思って。それだけ!』
いつだって明るいマナだけど
こうやってわたしを呼んで特に用事はないって言う時は
いつも少し心が疲れてしまっている時なことは知っている
だからわたしはいつも
「向こう行こう。」
そう言ってマナを個室から連れ出す。
部屋から出ると中央のソファー席にマナを座らせて、スタッフさんと目を合わすと、スッと手をピアノに差し出された。
わたしは小さくお辞儀をして、ピアノの鍵盤の前に座る。
軽く指を動かしてから鍵盤の上に指を優しく乗せた
パッヘルベルのカノン
柔らかい曲調に一定のコード進行が心地よい
マナの言うように
自分の指が鍵盤に触れて
音が耳に届いて
最後の1音の残響が消えるまで
わたしはその曲に入り込む
最後の1音が消えて
やっと周りの音が耳に入ってきて
周囲の映像が目に映る
決まってこのカノンを弾き終わって最初に見る光景は
涙を頬に伝わせるマナの顔
そしてその後
店内のあちこちから聞こえる拍手
今日も同じこの光景に
胸が温かくなる
わたしが人の心を温める方法は
きっとやっぱり音楽なんだろう
そして
わたしがわたしの心を温める方法もまた
きっとやっぱり音楽なんだろう...
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RJS(プロフ) - 游歌さん☆コメントありがとうございます!読み進めていただければわかるのですがアーティストネームとして【rtzu】という名前を使っていて本名が読み手さんのお名前になるように設定してます!なのでもう少し読むとお名前で出てくると思います!宜しくお願いします☆ (2022年9月10日 10時) (レス) id: acf635abfc (このIDを非表示/違反報告)
游歌 - 続けてのコメントですみません。。。 そしてこの主人公ちゃんは日本人の設定ではないのでしようか? (2022年9月10日 1時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
游歌 - こんばんは(*^^*) はじめまして。 夜分遅くにいきなりすみません。。。 この物語の主人公ちゃんの名前って固定なんでしょうか? (2022年9月10日 1時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RJS | 作成日時:2022年2月25日 18時