フォビアコンプレックス3 (ページ27)

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第百七話　ゼーゲンページ27

遂に、遂に私の求めていたものが手に入った！
厳密に言えばまだ私のものにはなっていない、けれど、これさえあれば、ルースの血液さえあれば彼女は手に入る。シオンは私の求婚を受けてくれるに違いないのだから！

「ゼーゲンさま、なんだか嬉しそうですね！」

「ええ、当然です。これから私は世界一幸せな男になるのですから！」

私の気持ちに気づいたのか、ウィルもにこにこと普段以上の笑顔を見せている。

「ウィル、貴方に特別な仕事をあげましょう。この計画書にある通りの完璧な式場を用意してください。できれば、数日以内に……」

私はかねてより計画していたシオンとの挙式についての計画書の写しをウィルに手渡した。これで後は、注文の品を彼女に届けるだけ。
髪と衣服を整えて、すぐさま彼女のいる娼館へと向かう。

シオン、君はあの日からずっと私の心を奪っていって、それは今も君の手の中にあるんだ。貧民街の、場違いな位の美少女だった君。薄っぺらな板切れで仕切られた隣に住んでいた君。

「いつか、お金持ちの王子さまと結婚して、たくさん贅沢させてもらうの」

君はずっと、そう言っていた。貧しい少年だった私には、君にとってのただの「お友達」程度にしかなれなかった。
私は君に豪勢な服や世の美食、凡ゆる嗜好品をいくらでも贈れるくらいのお金持ちになったんだ。地下都市の権力者として、人間に許される最も高い位にまで上り詰めたんだ。そして今、不死の秘薬を手に入れた。
君の求める「王子さま」として、充分な存在になれた筈だ！

街はギラギラと輝き、私の栄光を誇示しているかに思える。これは全て、彼女のために用意したプレゼントの一つに過ぎない。

血液を入れた小瓶のはいった赤い小箱を手に持ち、シオンの待つ部屋へ足を踏み入れた。

「お迎えに上がりました。私の愛しの姫君、シオン」

「……まさか本当に用意してくるとは思わなかったわ。あたしが頷くまで、本気で王子サマ気取りをやめる気はないのね、ゼーゲン？」