人間フィロソフィー (ページ7)

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第6話　セトページ7

「お母さーん、何してるの？」

　お母さんがずっと食料庫から出てこない。何かを食べているのだろうか、くちゃくちゃと派手な咀嚼音がする。

　仕方ないなぁ。僕はふわりと浮き上がって、食料庫へ昇っていく。谷の壁をほじくって作り上げたお母さんの家は、空を飛べる人じゃないと少し不便。まあ、お母さんも飛べないみたいだけど。

　食料庫を見ると、お母さんは四つん這いになって、一心不乱に何かを食べていた。

「お母さん？」

　呼びかける。けど、返事はない。変だな。それに、ひどい異臭がする。お母さんのものじゃないな。何を食べているのだろうか。覗き込むと、それが腐った人間の死骸だと気づいた。異臭の原因は、これだったのだ。

「お母さんってば、そんなにお腹が空いていたの？」

　話し掛けても、やっぱり答えてくれない。何となく、ナイフを突き刺してみた。こうすれば、反応はあるかな。でも、彼女は背中から飛び出したナイフの柄に気づいていないみたいに、人間を食べている。

「お腹壊しても、知らないよ」

　ナイフを引き抜いてみる。血がごぽりと溢れる。でも、彼女の傷口はすぐに塞がってしまい、折角の赤い噴水が台無し。

　ため息をついた。こうなったお母さんは、誰の声も聞いてくれやしないし、聞こえないのだ。しばらく放っておくしかない。

　どうしようかな。そうだ、キョギのところに遊びに行こうかな。彼でショーをやりたいんだ。きっと素敵なものになるはず。いても経ってもいられなくなって、僕は空を飛んだ。