制圧完了 ページ7
「ありがとう、助かったわ」
サリエルさんはもみあげをいじりながらそう言う。
あの後あたし達は戦線離脱した。あたし達よりも制圧部署の人達の方が効率的に蟲達を倒していってたし。
『A-082-Gの制圧が完了しました。担当職員はA-082-Gの収容室前で待機してください。繰り返します。A-082-Gの制圧が完了しました。担当職員はA-082-Gの収容室前で待機してください』
アラームが鳴った。制圧は終わったらしい。一息吐いて、その場で大きく伸びをした。
「ありがとうございます〜♡梓、すっごく嬉しいですぅ！」
一人称が梓の、桃色の髪をした銃剣の女性……梓さん、で良いのだろうか？梓さんがそう話しかけてきた。ひどく甘ったるく、わざとらしい声色で、言い方は悪いけど、まるで媚びているみたい。彼女には悪いんだけど、何となく癪に障る。
「大丈夫です。あ、あたし達はこれで！お仕事お疲れ様です！」
苦手意識を感じたのもあったんだけど、それ以上に苛立ちもあって。そして、声だけでそんな気持ちになる自分も嫌で。あたしはそれだけ言って、逃げるようにしてその場を去った。
かつんかつんと廊下を歩く。行く先は考えていない。部屋に戻ろうかと思ったけど、もしまた襲われたらと思うと、不安になったから。
カチュアは悩ましげに溜息をついたり、軽く唸ったりしていた。あたしに伝えるべきだという情報について、頭の中で整理しているみたいだ。あたしは口出ししない。ゆっくり考えてもらうつもりで。
「……！…………！！」
ふと、どこかで叫び声がするのが聞こえた。女の人、だろうか。何だろう？脱走していた幻想体は制圧したし、別の幻想体の脱走アラームもなかった。
耳を澄ませると、どうやらそこまで距離は離れていないらしい。カチュアとアイコンタクトして、あたしは声のする方へ歩いて行く。
歩いて行くにつれ、人が多くなってきていた。職員さん、らしい。廊下には血飛沫やどす黒い粘液が滴っていた。制圧の後始末をしているようだ。叫び声はいつの間にか呻き声に取って変えられていた。すぐ近くに、声の主はいるようだった。
「ぎぃいいいいいいい！！」
唐突に絶叫。神経を直になぞられるみたいな、ゾッとするような怖気のある声。あたし達は思わずびくりと震える。
この声は、何なのだろうか？あたしは人混みをかき分け、見た。
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