制圧作業 ページ6
そこにいたのは、たくさんの蟲。
ごきぶりとか、蝿とか、百足とか、蠍とか。人によっては見るだけで気を失いそう。それだけじゃない。蟲達は皆、あたし達より大きい。それに、なぜかひどく不定形のようで、半ば溶けているかのようであって。
そんな、生理的嫌悪感を催すような怪物達が、廊下を埋め尽くしている。蟲達の垂らすどす黒い粘液が、床を黒光りさせていた。
「何、これ……」
思わずそう呟いてしまう。カチュアの方は、腰が抜けてしまっているみたいで、力なくへたり込んでいる。
「ちょっとアンタ達!手伝ってよ!」
「大変だね〜、早く倒さなきゃ♡」
悲鳴みたいな声を上げながら蟲と対戦しているのは、サリエルさん。拳銃で蟲達を撃っているけど、だめだ。ダメージはかなり少ない。どうやら、蟲達は見た目の割りに硬質なようである。
サリエルさんと背中合わせにして、銃剣で戦っている人は誰だろう?桃色の髪をした、可愛らしいと言える顔立ちの女の人だ。口調こそ余裕そうだけど、その顔には焦りが浮かんでいる。サリエルさんよりは蟲にダメージを与えられているようだけど、それでも蟲達を追い払うくらいしかできていない。
「……っは、はい!カチュア、やるよ!」
サリエルさんに襲おうとしていた蟲にビームを放つ。螳螂みたいな蟲だった。螳螂と違うのは、それが人間とまったく同じ眼球を持っていた事。ビームは螳螂の目に直撃した。螳螂の目が潰れているのが見える。
溜めなしのビームでも、ひるませるくらいはできるみたいだ。
けれど、ビームは魔力を消費しやすい。溜めて威力を増したり、貫通型にすれば必要魔力は更に増える。蟲の量を考えたら、ビームを使いすぎるのは良くないだろう。
手足に軽く魔力を込めて、動きの鈍った螳螂を蹴り上げた。あたしの足が当たったところだけ、肉がなくなってる。一瞬遅れて、どろどろの体液が流れ出た。気持ち悪い!
「助けに来たよ!」
廊下の向こう側から、十人前後の職員さん達が来た。バッチの色からするに、全員制圧部署の職員さんらしい。素早い動きで、蟲達を次々と片付けていく。その中には、知ってる人が何人かいた。アインさん、ララさん、獅子台さん、R810さん。
蟲達が爆発したり、潰れたりしていく中で、あたし達はサリエルさん達を避難させる事にした。二人のバッチは両方緑色。戦闘員ではない、保険部署の職員さんだったから。
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