目覚め ページ32
「ああああああ！」
悲鳴を上げた。今あたしの目に写っているのは、白い壁と天井。どうやらあたしはベッドに横たわっていたらしい。
目が覚めた、のか？
いつの間にこうしていたのだろう。もしあたしの目が覚めたのだとすれば、つまりさきほどの光景は夢だったのだろうか？
そんな。
だとするなら、なんという悪夢なのだろうか。彼女と出会う事ができないじゃないの。そんなのってないわ。いくらなんでも、むごすぎる。
目を閉じる。夢の中の出来事だとは思えないほどに、彼女の事を鮮明に思い出せた。
彼女の青い身体と、そして何より美しい赤色。あたしは確かに、彼女に赤を捧げたはずだ。
それなのに。
「どうしてよ！どういうわけ？！」
あたしの隣では、カチュアが金切り声を出しながら枕を引き裂いていた。その頬は涙に濡れている。
あたしもそうしたかった。けど、堪えた。他人が感情的になるのを見ると、逆に落ち着いたりするでしょ？そんな感じ。
ひとまずは食事をとろう。それから、外の散歩もしなくちゃ。精神を安定させる必要がある。
「落ち着いてカチュア。まずは食事をとりましょう。一旦冷静にならなくちゃ。嘆くのは状況の分析をしてからよ。ほら、準備するから手伝って」
ぐずるカチュアの手を引いて、キッチンに向かう。朝ご飯はパスタにしよう。
たっぷりのニンニクをすりおろし、残りも細かく刻む。フライパンにオリーブオイルをたっぷり敷いて、ニンニクを炒めておく。その間にパスタを塩茹で。
香ばしい匂いが強くなったらフライパンの火を止めて、塩コショウと、そして砂糖を少々。味が馴染むようにかき混ぜる。茹であがったパスタとざるにあげ、煮汁をいくらかニンニクにかける。
それにパスタをよく絡めれば出来上がり。適当にバジルをちぎっていれた。
「いただきます」
味は悪くない。むしろなかなか美味しい。けれど、談笑する気分にはなれない。それはカチュアも同じだったのだろう。あたし達は無言でパスタを食べた。
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