遭遇 ページ31
そこはどうやら、温室のようであった。だがひどく荒れ果てている。花は潰れているし、制圧に来たのであろう誰かの亡骸もそこかしこに散らばっている。
けれど、あたし達の目を引いたのはそんなものじゃなかった。
神秘的な青い塊だった。かすかに動いていて、それはどうやら生物のようだった。表面がつぶつぶしていると思ったら、細かな鱗。爬虫類、なのだろうか？しかしよく見れば、鳥のような羽毛や動物のようなごわごわとした毛も生えている。どうやら、鱗の生えたところはごく一部だけのようだ。
いや、そんなのはどうでも良い。問題はその大きさだった。温室を突き破っているから具体的にどのくらいとかは分からないけど、小さく見積もっても二十メートルは優に越すだろう。
耳を澄ませればかすかな呼吸音と、啜り泣く声が聞こえる。ああ、なんて美しい音楽なのだろうか。
脳に直接響くような、しかしまったく不快感はない歌声。なんて心地良いのだろう。あたしはすっかり魅了された。隣のカチュアが目に入らないくらいに。
彼女のために、死ななければならない。
そうだ、そうだよ。どうしてあたしは彼女を傷つけようだなんて思ったのだろうか！あんなにも彼女は美しいというのに、哀れだというのに。
彼女はなぜ泣いているのだろう。それは分からなかった。けれど、自分が彼女のために何をしてあげられるかは知っていた。心がそうしろと囁くのだ。彼女のために。彼女のためだけに。
彼女の愛する赤い色が必要なんだ。赤い色。血と同じ色が。
どうしてこんなに死体が多いのかもすぐに理解できた。皆、あたしと同じ結論に達したんだ。
だって、皆は笑っていたから。幸せそうに微笑んでいた。
「お姫様、あたしの今までの命はあなたに出会うためだけに存在していたんですね」
この命、あなたのためだけに捧げます。
あたしはそう宣言した。魔力を指に込めて、あたしは自分の眼孔に突き刺した。奥に奥にと指を差し込み、脳をえぐって。
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