不穏 ページ3
「華璃ちゃん、おはよう！」
「おはようカチュア！」
清々しい目覚めだ。軽く背伸びをして、ベッドから降りる。
最近は寝付きが良い。予知夢を見る事もしばらくないし、収容違反こそあれど、あたし達が呼ばれる事は滅多になかった。
そもそも、あたし達は上級職員の中でも弱い方だ。呼び出される事は、他の人達よりもずっと低い。
けど、そんな事より……。
「そろそろだよね」
「そうだね。規則違反になるけど……身を守るためだから」
カチュアは頷いて、あたし達は変身する。
制圧作業時以外は、許可のない限り変身しちゃいけない。それでもやった理由は簡単。変身した方が、そうでない時よりずっと強くなれる。銃弾をはじくシールドを、指先一つで作り出せる。
もし今日来なかったら、あたし達は叱られるだろう。しかし、やらなくてはいけない。やらなくては、殺されるのだから。
今いるここが夢なのか現実なのか分からない。でも、これはきっと夢。
耳に魔力を込めると、音がより聞こえるようになる。小さな機械音、カチュアの心音、衣擦れの音、そして……廊下で、複数人が走る音。
それはこちらに近付いてくる。ああ、やっぱり。
かすかに音が鳴る。自動ドアの開く音だ。あたしは反射的に魔法でシールドを展開する。
そして、その判断は間違っていなかった。顔を向けた次の瞬間、展開したシールドが銃弾をはじく。
入ってきたのは、全身を武装した人々だった。聞いた事がある。あれは機動部隊だ。黒ずくめで、銃火器であたし達を攻撃する。しかし、変身したあたし達には通用しない。あたしがシールドを維持していると、カチュアが大きめのビームを放った。黒ずくめの何人かの身体が溶けてなくなる。
カチュアが目配せして、彼女の意思を悟ったあたしはシールドを破裂させた。ガラス片のように鋭く固いそれらは、いとも容易く彼らを切り刻む。
けど、部屋の外の廊下にもいる。あたし達は、今度は魔力を鎧のように身に纏った。そのまま廊下に出て、ひたすらにビームを打った。
数分後、廊下にはたくさんの人間の部位と血だまりがあった。
「どうする？」
カチュアが不安そうにこちらを見る。気怠い。魔力を少し消費しすぎてしまったようだ。このままだと、魔法が使えなくなるかもしれない。魔力というのは、職員さん達がフォボスエネルギーと呼ぶものだ。どうにかして取り込まなくちゃ。けど、どうやって？
……ここで考えるわけにはいかない。敵が来るかもしれないから。一旦、避難しよう。
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