真実 ページ10
「過去?」
あたしは首を傾げた。過去、だなんて。おかしな事よ。だって、もしあたし達が見ていたものが過去だとしたら、あたし達がこうして生きている事自体、矛盾しているじゃないの。
それを伝えるけど、カチュアは静かに首を横に振る。
「過去を見ているのよ。いいえ、言い方が悪かったかしら。私達は私達の記憶を見ているのよ。私達がどう殺されたかの記憶を」
?
あたしには、カチュアが何が言いたいのか、よく分からなかった。けどそれは、カチュアの中では確定していた事であるらしい。口調には迷いがなかった。
「襲撃に関与しているのはここよ。でも、直接的な原因は他にもあるみたいなの。あたし達は目的達成のために使われている……殺され続けているのよ」
「うん、分かった、分かったから。それで質問だけど、目的って何なの?」
頷く。本当はまったく分かってなかったけど、他に聞きたい事ができたから続きを促す。口調からして、あたし達を襲撃したり利用したりしているのはD社なんだろう。けど、それとこれとが何の関係があるのか?目的が何なのか、いまいち分からない。
あたし達は襲撃され続けている。そういう未来が、夢が、ずっと繰り返されている。……カチュアによると、それらは未来でも夢でもないらしいけども。
「目的は006っていうREDランク幻想体の完全収容、みたい。それで、そのために必要なのが、特定の職員さん……らしいの。その人の確保のために私達は利用されているのよ」
やっぱりよく分からない。軽く首を傾げる。その、特定の職員さんとやらについて聞けば、何か分かるかな?
「えっと……その職員さんって、どんな人なの?」
「ナンバーはW073、006を担当していたらしいけど、一年前に死亡したのですって」
「……待って。既に死んでいるの?」
「そうよ。だから、私達が殺されちゃうんじゃない」
カチュアにとってそれはもう重要じゃないのだろうか、さらりと言ってのけた。でも、あたしにとっては衝撃で。そして、カチュアが言っていた事の意味が、理解できてしまった。
それはつまり、あたし達が信じていた希望が潰える現実に違いなかったのだ。
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