制圧作業 ページ8
飛び出してきたのは、奇妙な生き物だった。怪物と言い換えても良いのかもしれない。
その姿を見て、思わず喉の奥がひゅっと鳴った。
その怪物は蜘蛛のような人間のような、奇妙な姿をしていた。大きな胸やくびれた腹、華奢な骨格をしているから、どうにも女性のようではある。
けれど……腕、なのだろうか？腕のような器官が四対ある。合計八本だ。それらは肩、脇腹、腰、足の付け根から生えている。それに、目も四つあって、瞳は更に八つ。
夢の中……予知夢の中に出た怪物。カチュアを殺した怪物だ。カチュアはびくりと震えたけど、すぐに恐れを振り切って、怪物を睨みつける。
怪物はこちらを見ると、何か呟くように口を蠢かせ、ゆっくりとこちらへ近寄ってくる。
「職員さん、職員さんはどこの所属なの？」
新人さんにそう囁く。怪物との距離はまだあったからできた事だ。新人さんは怪物から目をそらさないまま、あたしに答える。
「せ、制圧部署だよ。……だだだ、大丈夫、僕も戦える。心配しないで！」
明らかに震えている。それもそうだろう。目の前にいるのは、何の気もなく人間を殺せるような怪物なんだから。
怪物はかくかくと痙攣しながら、二足歩行でこちらに歩いてくる。目線は……新人さんをとらえて離さない。やつの狙いは彼のようだ。それに新人さんも気付いているのだろう。それでも、彼は逃げるのではなく立ち向かう事を選んだ。あたしはその勇気に内心で拍手を送った。
「……ぉ、ち……ちゃ……」
近付くにつれ、怪物が呟く内容が聞き取れるようになった。そして急に、怪物は悲鳴のような金切り声をあげてこちらへ突進する。あたし達もそれに答えるように、ステッキを突き出しながら突っ込んだ。ステッキの先端が輝き、細いビームが発射される。怪物の顔面に直撃。怪物はかすかに怯むけど、それでも大したダメージは与えられていない。けど、それも想定内だ。
素早く近寄り、怪物の顎を蹴り飛ばす。続いてカチュアが仰け反った怪物の腹に手刀を叩き込んだ。鋭い手刀は怪物の腹を貫通し、奇しくもそれは夢の中でカチュアが怪物にされたのと同じような構図である。しかし怪物は何事もなかったかのようにカチュアを掴みあげた。
怪物の顔に何かが当たる。その衝撃で緩んだ拘束からカチュアはどうにか逃れる。何だろうかとそれを視認するとほぼ同時に、あたし達は全力で駆け抜け、怪物から距離を置く。
その次の瞬間、背後で凄まじい爆発音がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 29人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
