魔法少女の事 ページ49
「辛かったですね、もう大丈夫ですよ」
駆けつけてくれた野々華さんは、あたし達にそうねぎらいの声をかけてくれた。気が付くとあたしはカチュアと一緒に野々華さんに抱き締められていた。
「あなた達のおかげで、ここは平和でいられるんです。ありがとうございます。いつも辛い思いをさせて、ごめんなさい」
あたし達が落ち着くまで、野々華さんはそうしてくれた。
しばらくそうしていると、どうにか気分が落ち着いた。痛みや戸惑いの記憶が消えたわけじゃないけれど、やっぱりこうしていると、それらはいくらか和らいだ。心の安寧を取り戻す事ができたような気がする。
そっと彼女から離れて、深呼吸をする。大きく息を吸って、吐いて。吸って、吐いて。リラックスしなくちゃ。
それがやがて穏やかになってきたから、あたしは深呼吸をやめる。
「ありがとうございます、野々華さん。あの、あたし達の部屋、もっとセキュリティ固くしてもらえませんか?」
「それは難しいですね……」
野々華さんは通信機で誰かと話をすると、首を横に振る。そんな、だとしたらあたし達はまた殺されちゃうかもしれない。
「それではゆっくりしてくださいね」
「はい、ありがとうございます野々華さん」
「ありがとうございます」
あたし達は出て行く野々華さんを眺める。気晴らしにゲームでもしようかと思ったけど、あのゲームが届いたのは夢の中だけだ。諦めて、適当なのをする。
早くこの事を忘れたい。不安だ。知らない誰かに、何の脈絡もなく殺されたんだから。もしかして、また同じように殺されるかもしれない。
あたしは溜息をついて、大きく伸びをした。
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