平穏 ページ47
「華璃ちゃん、おはよう!」
「おはようカチュア!」
清々しい目覚めだ。軽く背伸びをして、ベッドから降りる。
最近は寝付きが良い。予知夢を見る事もしばらくないし、収容違反こそあれど、あたし達が呼ばれる事は滅多になかった。
そもそも、あたし達は上級職員の中でも弱い方だ。呼び出される事は、他の人達よりもずっと低い。
「ねえねえ、お願いしてたゲームが届くのって、今日だよね?」
「そうだよー。確か、スローライフものだったっけ?」
「そうそう!そういう系だと、飽きが来るのも遅そうじゃない?」
カチュアはこの前頼んだゲームが届くのを楽しみにしている。カチュア、ゲームが大好きなんだよね。あたしもゲームは大好き。けど、ジャンルが違う。カチュアはテレビとかでやるようなデジタルのゲームが好きで、あたしはカードや小道具なんかを使うゲームが好き。
よほど興奮しているからか、カチュアはかちゃかちゃとリモコンのボタンを連打している。苦笑しながら、あたしは朝ご飯の用意をする。
今日はジャガイモのスープだ。皮を剥いて握り潰した芋を茹でて、鍋の中の牛乳に入れる。コンソメキューブと塩胡椒を入れて、完成だ。簡単な料理だけど失敗しづらいし、腹持ちして美味しい。
「他の職員さんも呼んで、一緒にやろうよ!これ、四人でプレイできるって」
「良いね。誰を呼ぼうかな?アインさん、獅子台さんは来てくれそうだよね。野々華さんにも来てほしいし、翔太さん、いろはさん、藍さん、律さんも……でも皆、忙しいよね」
あたし達がお願いすれば、彼らは来てくれる。それは、あたし達と遊ぶ事があたし達の管理作業とカウントされるからだ。けど、それは彼らの時間を奪う事に他ならない。
というか、ゲームプレイできる最大人数は四人だ。そんなに呼んでも、持て余してしまう。二人か、いけて四人くらいだろう。
「あ、スープできたよー。食べよー」
「はーい!待って、今行くー」
そうこうしているうちに、スープができあがった。目分量だから味は毎日違うけど、どれも美味しいんだよね。底の深い更についで、席に着く。いただきますと言おうとした、その時だった。
かすかに音が鳴る。自動ドアの開く音だ。野々華さん、だろうか?
顔を向けた次の瞬間、あたしの右腕が吹き飛んだ。あまりに突然の出来事に、痛みすら感じる余裕がない。
そしてそのすぐ後、あたしはあたしの眉間に飛ぶ銃弾を見た。
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