休息 ページ46
紅茶を淹れて、一息吐いた。
カチュアはお菓子の袋を開けて、少しずつ食べている。まるで、若葉をついばむ小鳥みたいだ。あるいは、木の実をかじる小栗鼠。
その愛らしい姿に、ほっこりとした気分になる。わずかにだけど、ストレスを忘れる事ができた。
けど、カチュアの顔はまだどんよりと曇っている。あたしはカチュアを元気づけたくて、話しかけてみた。この静寂に耐えられなかったってのも、あるんだけどね。
「カチュア、この後どうする？いつもみたいに食堂に行く？お散歩とかどうかな？」
「ありがとう華璃ちゃん。そうだね、今日はお散歩に行きたいな」
彼女は微笑んだ。その顔色はひどく悪い。
そっか。あたしは返事をして、一緒に部屋を出る。
今日はどこに散歩に行こうか。ALPHA寮棟かBETA寮棟に行って、友達とお喋りをしようかな。ああ、でも、彼らと仲良くなったのは夢の中でだけだ。現実では違う。あたしは彼らと出会った事すらない。
時々、嫌になってしまう。夢と現実の区別がつかなくなって、胸が苦しくなる。ついさっきまで友達だったのに、目が覚めれば赤の他人。
永遠に夢の中にいたい。現実に戻りたくない。けど、夢の中も苦しい。どれだけ幸せでも、最後には殺されるのだから。
あーあ。また同じ事考えてる。考えても、どうにもならないのに。
BETA寮棟に辿りつく。職員さん達は今日も忙しそう。その中に、顔見知りの職員さんがいた。口がたくさんある女の人、イグさんだ。
「こんにちは」
「む、こんにちは」
挨拶をすると、彼女は短く挨拶し返してくれた。その顔は、かすかに怪訝そうだった。初対面の人間に挨拶されたから、かな。あたしから見れば、初対面じゃないんだけどね。
道行く職員さん達に挨拶しながら、気の赴くままに足を進める。少しだけ、心が軽くなった気がした。
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