帰還 ページ35
入ってきたのは、三人の男女だった。そのうち一人には見覚えがある。アインさんを運んだ医務室にいた職員さんだ。亜麻色の髪を二つに結わえている。
一人は前髪の長い青年、一人は黒髪の女性だ。見た目からして、全員職員のようだけど……ええと、確か、N971、R168、S909……だったっけ。R810さんがそう言っていたのを思い出す。けど、誰が誰なんだろうか。
「あ、おかえりなさい皆さん。治療は必要ですか?」
いろはさんが呼びかけるけど、多分必要はないだろう。血がついてはいるけど、彼らに怪我はないようだったし。
いろはさんもそれを知っていて、でも念のために聞いたんだろうな。彼らへの気遣いを感じる。
「別にいらねーよ。つか僕が怪我してないの見て分からない?」
亜麻色の髪の女性職員さんが言う。それも、いろはさんを馬鹿にしたような口調で。思わずむっとするけど、とうのいろはさんはそこまで気にしていないのか、にこにこと笑顔を浮かべている。
「大丈夫でござるよいろは殿、お気遣い感謝いたす」
目元の隠れた青年は穏やかに返した。独特なイントネーションがあるが、これは鈍りか何かだろうか?日本人のようだから、もしかすると英語に不慣れなのかもしれない。まあ、あたしも日本人なんだけどね。
黒髪の女性は喋らず、棚に向かって歩いて行った。缶を一つ取り出して、勢い良く飲んでいる。寡黙、というより、ひどく疲れているようだ。それを感じ取ってか、翔太さんは彼女の肩を担いで、部屋の奥に連れていく。目で追うと、そこには簡易ながらもベッドが設置されてあった。そっと寝かせると、戻ってくる。
「あ、こんにちはでござる!そなたが魔法少女殿でござるか?」
眺めていると、青年があたしに気付いたようだ。フレンドリーな口調をしていて、何となく心地良い雰囲気がある。
「はい。あたしは淤加美華璃、魔法少女です。よろしくお願いします」
「拙者は獅子台忍でござる。あ、管理ナンバーで言った方が良いでござるか?管理ナンバーはS909、制圧部署所属でござる!」
彼はにっこり笑う。それはとても純真で、爽やかな笑顔だった。
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