挨拶 ページ32
「……あの」
どうしようもなくて、まずあたしは茶髪の男性……H391さんに話しかける事にした。イグさんはかなり忙しそうだったし、彼が一番近いところにいたから。彼はこの前、白雲さんと機械を運んでいたのを見た事もあった。少しでも知っている人の方が、なんとなく安心できる。
「な、何があったんですか?」
「ん?この騒動?」
壁にもたれかかっていたH391さんはちらりとこちらを見る。包帯やガーゼで傷の手当をされているのだが、いたるところからうっすらと血が溢れてきていて、痛ましかった。
彼はその茶髪を……いや、よく見れば茶髪ではない。クリーム色と言うべきか?そのもみあげを指先で軽くいじりながら答える。
「正直なところ、俺らにもよく分かってないんだよね〜。幻想体がいきなり一斉に脱走したみたいでさ……機械の不調とかあったっぽいし、それが原因なんじゃね?って話だよ〜」
「幻想体達の暴走もあって、ここは壊滅状態なんです。本部との連絡もできなくて……イグさん達情報部署の方が通信機器の修理をしてくださっているんですけど、システムの損傷がひどくてあと三日はかかるみたいなんです」
横にいた女性……保険部署のチーフ、M263さんが言う。その顔には穏やかな笑みが浮かんでいたけど、少し不安そうだ。
「あ、そうそう。自己紹介まだだったね!俺は柴田翔太、翔太お兄さんで良いよ!ナンバーはH391、これでも制圧部署職員だから頼ってくれよ!」
「磨仲寺いろはです。ナンバーはM263、保険部署チーフを務めています。よろしくお願いしますね」
「淤加美華璃です。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる。そんなにかしこまらなくても良いのに、と翔太さんがおかしそうに笑った。それに対していろはさんが、そうですよ、と優しい笑顔で続ける。
他の人にも話しかけて、情報を得るべきかな。優しそうな二人と話していたかったが、そうするわけにもいかないし。
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