目覚め ページ21
「ああああああ?!」
情けない悲鳴をあげながら起き上がる。見えるのはいつもと変わらない、無機質な天井。まったく使われてないような、新品なシーツの感覚。
ともかく、落ち着こう。大きく息を吸って、吐いて。
しばらくそうしていると、あたしはどうにか落ち着いた。それで、どうやら先程の出来事はすべて夢であるのだと気付く。そう、そうよ。あれは夢、夢よ。それを理解すると、緊張がほぐれて、疲れがどっと出てきた。
また悪夢を見たのね。
起きたばかりなのに、もう寝たくなってしまった。けど、そうするわけにもいかない。渋々ベッドから降りて、大きく背伸びする。隣のベッドでは、カチュアがまだ眠っていた。うんうんと唸っている。その様子があまりにも可哀想で、あたしはカチュアを揺り起こす。
「カチュア、カチュア、起きて」
「……華璃、ちゃん?」
カチュアは顔をしかめたまま、起き上がる。
「ご飯、食べよ?」
「うん、そうだね」
カチュアをゆっくりと起こして、木製のロッキングチェアに座らせる。ロッキングチェアに座ったカチュアは、まだぼんやりとしていた。眠いのかな?
インスタントのコーンポタージュを二人分作って、カチュアに渡す。小さな声でありがとう、とカチュアは言ったけど、なかなか飲まない。あたしはそれを横目にしながら、部屋に備え付けられている通信機で野々華さんに連絡する。
「おはようございます、野々華さん。えっと、夢を見ました。はい、予知夢です。幻想体が大量に脱走していました。ナンバーは確か……A-723-Y、だったはずです。他にも複数のYELLOWランク幻想体が脱走しました」
内容を報告しようとすると、夢の中の出来事を思い出してしまう。あたしは思わず声を詰まらせて、泣きそうになるのを堪えた。
思い出したくもないのに。自分がどうやって殺されたか、そんなの覚えていたくなんてないのに。けど、こうして伝えなければならないのだ。
「そちらに向かいます、待っていてくださいね」
野々華さんはそう言った。ありがとうと伝えたかったけど、涙のせいで言えなかった。
ああ、いつもの事なのに。
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