制圧作業 ページ20
幸いにも死体の山がクッションになり、あたしは床への激突を防ぐ事ができたが……それでも身体のダメージはひどい。少なくとも骨が三本は折れている。
まず目に付いたのは右腕。変な方向に折れて……いや、ねじ切れている。骨が剥き出しで、くっついてこそいるものの、いつぷつりと千切れてしまうか、分からないくらい。
絶叫して、あたしはじたばたともがき死体の山から立ち上がり、あたしに攻撃した幻想体を睨む。やはりあの幻想体だった。大量発生した幻想体。Jackさんが幻想体の頭蓋を大きな斧で真っ二つにした。が、幻想体はまだうようよしている。
ステッキは廊下の端に落ちている。拾いに行くには少し遠いだろうか。
『B-666-Yが脱走しました。付近の職員は速やかにB-666-Yを制圧してください。繰り返します。B-666-Yが脱走しました。付近の職員は速やかにB-666-Yを制圧してください』
『B-729-Yが脱走しました。付近の職員は速やかにB-729-Yを制圧してください。繰り返します。B-729-Yが脱走しました。付近の職員は速やかにB-729-Yを制圧してください』
『C-001-Yが暴走を始めました。付近の職員は速やかにC-001-Yを制圧をしてください。繰り返します。C-001-Yが暴走を始めました。付近の職員は速やかにC-001-Yを制圧してください』
『B-496-Gが暴走を始めました。付近の職員は速やかにB-496-Gを装備し制圧を行ってください。繰り返します。B-496-Gが暴走を始めました。付近の職員は速やかにB-496-Gを装備し制圧してください』
新しい幻想体の脱走アラームと暴走アラームが次々に鳴り響く。
ああもう、職員さん達は何をしているの?人間のような姿をした幻想体達はどんどん増えてきている。ともかく、このままではじり貧だ。一旦体勢を立て直さなくちゃ。ああでも、あたし達の任務はここで敵をやっつける事。逃げちゃだめなんだ。
ステッキがないから、魔法をうまく使えない。代わりに素手で殴りつける。魔力を拳に纏わせて少し小突くと、彼らの頭が腐った果実みたいにぱぁんとはじけ飛んだ。それでも、数が多すぎる!五十?百?二百?
気のせいか、さっきよりも数が増えている。さすがにもうさばききれない。やつらはあたしの髪の毛を引き千切り、左目と両耳を抉り取った。自分の事だけで手一杯で、カチュア達がどうなっているのかなんて分からない。
そして次の瞬間、あたしの右脚に激痛が走った。バランスをとれずに崩れ落ちると、幻想体達は一斉にあたしに覆い被さる。
彼らの隙間から、誰か女の子が覗いているような気がした。
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